野球もお茶も、大切なのは「和の心」? WBCで連覇を目指す侍ジャパンは、京都出身の北山亘基投手(26)考案の「お茶たてポーズ」で一体感を高めている。一見、全く異なるフィールドにも思えるが、意外な共通点があった。茶道三千家の表千家同門会・大阪支部で事務長を務める前田一成氏(67)に専門家ならではの目線から、ポーズのポイントを解説してもらった。【取材・構成=磯綾乃】
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茶わんを持つように左手を下にして、右手でシャカシャカとかき混ぜる。ベース上やベンチで侍ジャパンが行う「お茶たてポーズ」が、試合のたびに話題となっている。
北山が「ダイヤモンドをかきまぜて、お茶をたてて、みんなで点数を取っていきましょう」と考案したポーズ。茶道の世界から見て、あの動きは合っているの? 「選手の皆さんが優しく左手を添えて、ポーズをされますよね。まさしく、あの動きなんです」。にこやかに太鼓判を押したのは、表千家同門会の大阪支部で事務長を務める前田さんだ。
動きのコツは、意外にも野球に通じていた。「私たちは『手首を楽に振って』と言います。子どもたちに教える時は『野球でもスナップを利かせると言うでしょ』と教えたりもしますよ」。腕に力を入れすぎると、お茶はきれいに泡立たない。手首を柔らかく、かつ切れ味よく動かす。まるでスローイングの話をしているかのようだ。
茶筅(ちゃせん)を振る回数は決まっていないそうだが、あまり多すぎるとお茶は冷め風味も落ち、反対に少ないと抹茶とお湯が混ざらない。「気持ちを込めて『おいしくなれ』とたてるのが大事です。野球でも『1球入魂』と言いますよね。その場で魂を入れる。心を込めて茶筅を振ることが大事です」。1つの“プレー”に込める強い思いは同じだ。
茶道の世界でも「お茶たてポーズ」の反響は大きかった。「子どもたちに『選手もポーズやっているよね』と話したりしています。お茶に通じている方だけでなく、身近なところから楽しんでもらえることがいいですよね。お茶に焦点を当てていただいてうれしく思います」。考案した北山の意図を目にし、共通点も感じたという。
茶道では1つの茶わんを使い、1つの器から和菓子を取り分ける。「『一座建立』といって、お茶とともに1つの座を作っていくという考えがあります。一体となって楽しいお茶会を作る。その中にも厳しさがあり、ともに向上していく。お茶会に通じるものがあるなと思います」。
楽しみながら一体感を作り上げ、一方でルールや厳しさも忘れない。フィールドは違えど、共通するのは「和の心」だ。「野球も真剣勝負。私たちも常にお客さんを気遣い、どうやって楽しんでもらえるかを、真剣に見合いながら考えています。そういう面では文化もスポーツも一緒ではないでしょうか」。
最後にポーズの“アドバイス”をお願いした。「チームが『一緒に頑張るぞ』『やっていて良かった』という気持ちでやってくれたらいいですね。あのポーズが1つでも多く、たくさんの試合で見られたら私たちはうれしいです」。日本の文化を胸に、米国でも心を1つに戦っていくはずだ。

