【グレンデール(米アリゾナ州)19日(日本時間20日)】侍ジャパンのエース菅野智之投手(27)が、明日21日(日本時間22日)の準決勝・米国戦に向け秘技を用意した。今大会は直球を軸にスライダー、カットボールを多投してきた。米国打線に対し「あったら有効になるのは間違いない」と63球を投げ込んだブルペンで、フォークボールを入念に確認した。1、2次ラウンドではほとんど使わなかった縦変化で米国を突き落とす。

 縦横無尽に動かした。ライト後方の屋外ブルペンで菅野が緊張感を漂わせた。冒頭は小林を相手に互いの意見を交わしながら大一番となる準決勝・米国戦へイメージを膨らませた。「直球を軸に次の試合も投げると思う。基本は直球。しっかりと投げ切れればいい勝負になる」としながら「あったら有効になるのは間違いない」とフォークボールの軌道を入念に確認した。

 パワーに勝る相手打線との対戦でカギを握るのは縦変化の変化球になる。今大会は主にスライダー、カット、ワンシームでボールを動かしてきた。「今更、何かを出来るわけじゃない。今までやってきたことしかできない」と大きくスタイルを変えることは不可能だということは分かっている。だが、4回7安打4失点だった前回登板のキューバ戦で得た感覚は次戦に生かす必要がある。変化球が曲がり球一辺倒になればプルヒッターが並ぶ米国打線の餌食になりかねない。

 この日のブルペンで米国戦のイメージをより具体的に表現した。左右の打者ともにフォークボールをいつも以上に多投。左打者には外角ボールゾーンから外角いっぱいに食い込むスライダーをカウント球として想定。直球は低めよりも打者の胸元を徹底して厳しく攻めた。「自分の力を試したいという気持ちは1ミリもない。とにかくチームが勝つ投球をしたい」。勝利至上主義を貫く覚悟を18・44メートルに込めた。

 準決勝からは球数制限も95球まで緩和される。だが、もはや球数どうこうの戦いではない。「球数は気にしないでゼロに抑えることだけを考えている。上原さんから、そう助言をいただいた」と、世界一を知る大投手からの熱いエールを胸にしまう。頭脳と技術を駆使した投球で米国に立ち向かう。「(米国打線は)知っている名前しかいない。ただ、自分の力を出せば、どんな相手でもいい勝負ができると信じている」と気合十分。ドジャースタジアムのマウンドまで残り1日と迫った。【為田聡史】