WBA世界ミニマム級2位の石井武志(26=大橋)が世界初挑戦で世界奪取に成功した。同級3位ウィルフレド・メンデス(29=プエルトリコ)との同級王座決定戦に臨み、井上尚弥の1分10秒を上回る国内男子の世界戦最速となる1回1分5秒、KO勝ち。プロ13戦目で王座獲得に成功した。所属ジム会長の大橋秀行氏(61)、指導を受ける元世界3階級制覇王者・八重樫東トレーナー(43)が巻いてきた所属ジムゆかりのWBAミニマム級のベルトを「3代目」として手にした。

石井がゴングと同時に前へ出てプレッシャーをかける。メンデスはクリンチも使いながらいなそうとするが、圧力を緩めずスタミナを削りにいく。開始1分5秒、強烈な右を一閃。メンデスは立ち上がることができず、鮮烈なKO勝利を飾った。

「感謝する人しかいない。周りに恵まれたからチャンピオンになれた。人生で一番うれしいです。最高です」

地元の福岡で3年間、プロキックボクサーとして活動後、21年に「兄貴分」と慕う元K-1スーパーバンタム級王者で前WBO世界バンタム級王者の武居由樹(30=大橋)の背中を追ってボクサーに転向した。22年に全日本ミニマム級新人王に輝き、25年には東洋太平洋同級王者となって2度防衛。最軽量級ながらKO率は66%。大橋会長が「この階級は倒さなくては注目されない」という猛ゲキを実現し、待望の世界挑戦にこぎつけた。

唯一の黒星は23年9月のリト・ダンテ(フィリピン)戦だった。当時、世界15位だったダンテの試合巧者ぶりに手を焼き、1-2の僅差(きんさ)判定負け。試合中に左目眼窩底骨折の重傷も負った。手術後の1カ月間の休養中に「辞めよう」と頭をよぎった。「食べるだけ食べて太るだけ太り、ボクシングできない体に」と不摂生し体重は60キロ近くまで増加。練習再開後に誘われた走り込みでは最下位となり「こんなに落ちるんだと情けなくなった。そこから頑張れた」。ジムに戻ればトップ級の選手がいる。武居からも「まだまだ。これから」と激励され、気持ちが奮い立ったという。

所属ジムにとって6人目の世界王者誕生となった。大橋会長が現役時に在籍したヨネクラジムは5人の世界王者を輩出。同会長は「世界王者5人を目標にやってきた。石井が勝てば6人目なのでそれがモチベーション」という師匠の掲げてきた大きな夢を石井がかなえた。

前WBA世界同級王者松本流星(28=帝拳)が9月27日、WBO世界同級暫定王座決定戦に出場する。お互いに勝ち上がれば、統一戦の夢も広がる。石井にとって大きな目標だった世界王座獲得。今度はベルトを死守する王者ロードが始まる。「フィジカルはミニマム級世界一」と自称してきた石井は「松本選手に限らず、ミニマム級で強いと言われている選手全員とやりたい」と見据えていた。

◆大橋ジム輩出の男子世界王者 川嶋勝重(WBC世界スーパーフライ級王者)、八重樫東(世界3階級制覇王者)、井上尚弥(世界4階級制覇王者)、井上拓真(WBA世界バンタム級王者)、武居由樹(WBO世界バンタム級王者)、石井武志(WBA世界ミニマム級王者)

◆国内の世界戦最速KO 男子は石井武志が2日のウィルフレド・メンデス(プエルトリコ)戦でマークした65秒。2位は18年10月、井上尚弥がフアンカルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)戦で記録した70秒、3位は平仲明信が92年4月、エドウィン・ロサリオ(プエルトリコ)戦の92秒。女子は昼田瑞希が23年6月、ケーシー・モートン(米国)戦でマークした63秒。

▼石井武志(いしい・たけし)

◆生まれ、サイズ 1999年(平11)10月26日、福岡・うきは市生まれ。身長156センチの右ボクサーファイター。

◆スポーツ歴 小学1年から中学3年まで野球部。キックボクシングにあこがれ、中学2年から空手も開始しキックのアマ大会出場。高校卒業後にキックボクサーに。

◆キック王座 所属道場運営の大和KICK大会で52・5キロ級王座獲得。K-1に適正階級がないため、元K-1王者武居由樹の背中を追い、21年ボクシング転向。

◆たたき上げ 22年5月、2回TKO勝ちでプロデビュー。同年に全日本ミニマム級新人王、24年9月に東洋太平洋同級王座獲得。

◆海外修行 24年8月に2週間、オーストラリアに修行。五輪代表アレックス・ウィンウッドらの練習パートナーを経験。

◆家族 両親と姉兄。