「あしたのジョー」「おれは鉄兵」などのヒット作で知られ、文化勲章を受章した漫画家ちばてつや(本名千葉徹弥)さんが22日、都内の病院で死去した。87歳だった。ちばさんの訃報に各界から追悼の声があがった。ボクシング界のレジェンド「浪速のジョー」辰吉丈一郎(56)が日刊スポーツの取材に応じ、ちばさんを悼んだ。

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辰吉は、静かに言った。「ショックですよね」。この日、知人からちばさんの訃報を聞いた。「あしたのジョー(で描かれたのもの)は、ボクシングというよりも、心境。(主人公が)はい上がっていく物語が主に描かれていたと思う」。

大阪府・守口市内の自宅には「あしたのジョー」全巻がそろっている。少年のころに初めて読み、プロデビューした後に読み、そして世界王者になってからも読んだ。印象に残っているのは、ボクシングにつきもののシーン。「やっぱり減量が苦しい、きつい、そういうイメージがあった。ボクシング=減量しないといけないという。力石、矢吹…。どのボクサーも苦しむものだけど。当時の減量は、ウチの時(90年代)とは違って、飲まず食わず。苦しい表現もあった」。

辰吉は70年5月生まれ。

「あしたのジョー」は67年12月に連載が始まっており、父の故粂二(くめじ)さんに主人公・矢吹丈の名前から「丈一郎」と名付けられた。「(父は)ジョーというのが気に入った、でもジョーだけだと(漫画と)同じになる。ウチは長男だから、丈一郎となった」。

愛称「浪速のジョー」については「大阪に住んでいるけど、岡山(出身だから)。浪速ではないけどね」という。ただ矢吹丈の姿と、父1人子1人で育ち「出世してくるけんな」と15歳で故郷岡山を出た辰吉の姿は重なり、多くの人の心を揺さぶった。

生前のちばさんと面識はなかったという。それでも折に触れて「あしたのジョー」を本棚から引っ張り出し、読んできた。「ショック以外に何も言えない」。辰吉にとって、道しるべのような漫画でもあった。【益田一弘】

◆辰吉丈一郎(たつよし・じょういちろう)1970年(昭45)5月15日、岡山・倉敷市生まれ。4戦目で日本バンタム級王者、8戦目で当時日本選手最速の世界王座獲得。薬師寺との世紀の王座統一戦で判定負け。97年11月、シリモンコン戦で劇的勝利し2度の世界王座返り咲き。戦績は20勝(14KO)7敗1分け。愛称は「浪速のジョー」。家族は妻るみさん、長男寿希也さん、次男寿以輝は現役のプロボクサー。

◆ちばてつや 本名千葉徹弥(ちば・てつや)1939年(昭14)1月11日、東京都生まれ。同年11月に朝鮮半島を経て、41年に旧満州・奉天(現中国・遼寧省瀋陽)へ。日本に引き揚げた後、56年に貸本向け単行本作品でプロデビュー。58年「ママのバイオリン」で雑誌連載を始め、61年「ちかいの魔球」(原作・福本和也)で週刊少年誌にデビュー。代表作「あしたのジョー」はテレビアニメ、実写映画化し広い世代に愛された。文星芸術大学学長、公益社団法人日本漫画家協会会長。文化功労者、日本芸術院会員。