過去を紐解いた時に、「あれが日本ボクシング界の転換期だった」、そう言われるかもしれない夏がやってくる。

 日本の3人のボクサーが立て続けに本場米国のリングに上がる。すべてが世界タイトル戦。激闘ぶりで多くの海外ファンの人気を得ている男は王座返り咲きを狙い、独自の歩みで上り詰めてきた男は史上最大とも言えるビッグネームと拳をまじえ、「怪物」と称される若者はいよいよ海を渡りそのベールを脱ぐ。

 7月15日から9月9日までのわずか56日間で3試合。これまで米国で日本人の世界タイトル戦は25試合が行われてきたが、2カ月以内に3試合は初めてとなる。1968年(昭43)に西城正三がWBA世界フェザー級王座に挑戦してから半世紀余り。ここまで詰まった日程で日本人が米国の世界タイトル戦のリングに上がったことはない。

 まずは7月15日、元WBC世界スーパーフェザー級王者三浦隆司(33=帝拳)が、ロサンゼルスで現王者ミゲル・ベルチェルト(メキシコ)に挑む。すでに15年に米国での世界戦は経験済み。カリフォルニア州インディオで開催された1月の挑戦者決定戦でも、「ボンバー」と呼ばれる左拳を爆発させるKO劇で、米国のファンを魅了した。

 続く8月26日、WBO世界スーパーウエルター級5位亀海喜寛(34=帝拳)が、同王座決定戦に臨む。相手は元4階級王者ミゲル・コット(プエルトリコ)。ファイトマネーで1500万ドル(約16億5000万円)を稼いだこともある超大物で、「日本人の世界戦史上最大の試合」という声もある。元東洋太平洋王者の亀海は、11年から主戦場を米国に移し、一歩ずつ評価を上げてきた異色の存在。たどり着いた先が「自分が20歳のころから見ていた」というコットで、本人も驚きを隠さない試合が待っていた。

 最後は9月9日、WBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥(24=大橋)が6度目の防衛戦を西海岸で行う。米国からの「オファー」に応えての渡米は、ニュースター発掘にかける米国リングの思惑に沿う形で、日本人ボクサーとしては異例の立場での参戦となる。売り込んだのではない。その戦いぶり、強さが日本にとどまらない評価を不動のものとした上でのオファーだ。大橋会長は「これが伝説の始まりになる」と予言する。

 海の向こうから熱いニュースが届きそうな2カ月間。3人の戦いぶりが、大きな契機になることは間違いない。【阿部健吾】