2016年も、残りあとわずか。今年も活気にあふれた相撲界では、土俵上で多くの技が繰り出された。年間を通じて幕内を保った28人の力士のうち、最も多くの決まり手を見せたのは誰か? 今年は白鵬、日馬富士、鶴竜、豪栄道、高安、嘉風の6人が15手で並ぶ結果となった。

 その6人の年間勝利数は白鵬が62勝、日馬富士が67勝、鶴竜が57勝、豪栄道が56勝、高安が53勝、嘉風が42勝。つまり、より少ない白星の嘉風が、最も多彩な技を駆使して勝った計算になる。

 嘉風と言えば、体は176センチ、145キロと決して大きくないものの動きの速さと激しさ、そして闘志あふれる姿が印象的だ。春場所では白鵬の手荒い攻めで鼻血が噴き出し、その後も左右の目を負傷するなど、激しい相撲の代償として多くの傷を負ったが、今年の土俵を大いに沸かせてくれた。「けがをしないように…」と、負けが決定的な土俵際になると力を緩める力士もいる中で、最後まであきらめない姿は、まさに侍の精神を持った力士と言えるだろう。

 目のケガについて、嘉風は言う。「信用できる先生がついてくれてるので、大丈夫。蚊に刺されたようなものですよ、強がりじゃなくてね。土俵でケガした後も、当たっていけてるし、(蚊に刺された程度だということを)証明できてるかな」。ニヤリとした表情で口にするセリフも、まさに現代の侍そのもの。年が明けると、3月で35歳になるが、気持ちはまだまだ若い。嘉風の元気ハツラツな相撲ぶりには、40歳を超えた記者も勇気をもらっている。【木村有三】