大相撲初場所13日日、貴景勝に突き落としで敗れた白鵬(2019年1月25日撮影)
大相撲初場所13日日、貴景勝に突き落としで敗れた白鵬(2019年1月25日撮影)

「平成」の元号が終わりを告げる年、初場所で時代の潮目を感じた。担当歴2年弱の新米で、相撲のなんたるかもまだ分からんのですが、確かに感じるものはありました。

数年後に「あれが引き潮やったんか」と思うかもしれん出来事は、14日目に起こった。横綱白鵬の休場。驚いた。初日からの10連勝後、御嶽海、玉鷲、貴景勝に3連敗した翌朝、白鵬の朝稽古を見ようと訪れた宮城野部屋前で一報が入った。確かに玉鷲に1差リードを許したが、残り2日で逆転Vの可能性はあった。なのに休んだ。それまで途中休場は5場所あったけど、場所が最も押し迫ったタイミングは関脇やった05年名古屋場所の9日目。優勝争い最中の14日目の休場なんて初めてのことでした。

診断内容は「右膝血腫、左足関節炎で約1週間の加療を要する」。額面通りに受け取れば重症ではない。ただ、右膝は昨秋に骨片除去手術をして、昨年九州場所全休の要因になった箇所でもある。13日目の取組後、左膝の違和感を問われて「(初日から)ずっとだからね」とこぼしていた。

残り2日、無理を押して相撲をとって、症状が悪化する怖さがあったのかもしれない。白鵬も33歳。11年以上も横綱を張った者にしかわからない疲労や、体への不安もあるんでしょう。41度も賜杯を手にした、絶対的な強さは揺らいでいるのかもしれません。

逆に「あれが上げ潮やったんか」と思う現象は、やはり若手の台頭です。優勝は34歳の関脇玉鷲が手にしたものの、26歳の小結御嶽海が3横綱1大関を破り、途中4日も休みながら殊勲賞に輝いた。22歳の関脇貴景勝が、昨年九州場所初優勝の勢いを持続させ、千秋楽まで2場所連続優勝の可能性を残した。平幕で2桁白星を残したのは3人いたが、32歳の魁聖を除いて、残る2人は28歳遠藤と24歳阿炎でした。また9勝に終わったものの、26歳北勝富士が西前頭2枚目で9勝し、春場所の新三役を濃厚にした。

千秋楽に御嶽海はこう言いました。「時代が動いてるな、と感じますか?」と聞くと「時代は動いてますよね」。おうむ返しのようなやりとりですが、かみしめるような口調は印象的でした。

春場所は3月10日から始まります。貴景勝は自他ともに認める大関とり。御嶽海も自信を深め、体調を整えてくるはず。貴景勝の躍進に燃える同世代の阿武咲、阿炎もいれば、御嶽海をライバル視する同学年の北勝富士もいる。そんな20代の勢いを、白鵬が受け止められるのか。

平成最後の本場所は、まさに待ったなしです。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲初場所で殊勲賞と敢闘賞を受賞した玉鷲(中央)左は殊勲賞の御嶽海、右は技能賞の貴景勝(2019年1月27日撮影)
大相撲初場所で殊勲賞と敢闘賞を受賞した玉鷲(中央)左は殊勲賞の御嶽海、右は技能賞の貴景勝(2019年1月27日撮影)