土俵へ向かう力士の顔つきは自然と引き締まる。東幕下筆頭の丹治(20=荒汐)も同じだ。それでも場所前の朝稽古後、スイカを手に腰を下ろした姿は、こちらが少し拍子抜けするほど親しみやすかった。話題は相撲ではなく眼鏡だった。
存在感のある黒縁の眼鏡越しに、丹治はざっくばらんに笑顔で話してくれた。「何かで個性は出していきたいんです」。視力は「0・1くらい」で、生活に欠かせない。だからこそ「マジで大事です。安いものをころころ変えるより、良いものを持っていたい」という言葉にも実感がこもる。
眼鏡にこだわる理由にも、丹治らしさがあった。「時計とかバッグは自分がつけたところで顔じゃないんで。眼鏡だったらしょうがないじゃないですか、目が悪いって言えば」。視力のために欠かせないものだからこそ、顔の印象に直結する眼鏡で個性を出す。さらに「自分のご褒美に買うので。場所の成績が良かったら買うこともあります」と続けた。
その“ご褒美”になる白星を、13日目につかんだ。3勝1敗から連敗し、勝ち越しを懸けた3度目の一番で結果を出し、来場所の新十両昇進を確実にした。
「今日の勝ちは一生忘れないと思うので」。これは、新しい眼鏡を買う十分な理由になるだろうか。眼鏡が離せない丹治だけに、関取として迎える秋場所も目が離せない。【山田遼太郎】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)


