WBO世界ミニマム級王者山中竜也(23=真正)が0-3の12回判定負けで、2度目の防衛を逃した。同級3位ビック・サルダール(27=フィリピン)の右ストレートで7回にダウンを喫し、終盤は約15キロの減量の影響で両脚がつった。流血しながら意地を見せたが、ライトフライ級への転向を含めて、今後のプランは再考することになる。中卒から、たたき上げの男が大きな壁にぶち当たった。

 快調だったはずの山中が、1発の右ストレートで沈んだ。徐々に距離を詰め、戦略通りに進んでいた7回。サルダールのワンツーをあごに受け「かなり効きました」。起き上がると、今度は両脚がつった。言うことを聞かない体に加え、終盤には左まぶた付近から流血。懸命に立ち向かったが「向こうが勝ったと思いました」と覚悟を持ち、12回終了のゴングを聞いた。

 順調に見えた減量にも落とし穴があった。山下会長は「減量やね」とつった両脚について分析。3月の初防衛以降、祝いの場が増え、山中の体重は62キロ台に達した。47・6キロのリミットまでは約15キロ。最近の世界戦では体重超過が度々問題となっており、王者として「怖いのは怖い。計量失敗する夢を見ることもある」と、その不安は増した。

 減量期間中は神戸市内の自宅に母理恵さん(47)が訪れ、減量食を用意。前日計量では100グラムアンダーでパスし「体調はいいです」と笑った。この日はママチャリで会場入りし、普段通りかと思われた流れだったが、足をすくわれた。

 ベルトを失った控室では、額に巻いた白のタオルを血でにじませながら「その時(ダウン)だけ(ガードを)開いてしまった」とポツリ。それでも「これで終わるつもりはない」と言い切った。山下会長は「本人と話して決める」とし、ライトフライ級転向も含めて、今後のプランを再考する。中学卒業後からボクシングに打ち込む理由を「好きだから。漫画(はじめの一歩)を読んで、長谷川(穂積)さんを見てのめり込んだ」と言い切る男。立ち止まるのは、まだ早い。【松本航】