08年北京オリンピック(五輪)柔道男子100キロ超級金メダリストで総合格闘家の石井慧(32=チーム・クロコップ)が「ミルコ魂」を宿らせ、王座獲得に成功した。HEATヘビー級王者カルリ・ギブレイン(31=ブラジル)に挑戦し、2回3分54秒、腕固めで仕留めた。

即座にタックルに成功し、横四方固めから拳をふり下ろし、マウント(馬乗り)も取って攻撃。最後は得意の関節技でとどめを刺した。1回途中で禁止ルールの寝技でのヒザ攻撃に激怒し、試合後にギブレインに詰め寄るシーンもあるほどの迫力ファイト。石井は「思わず感情が出てしまいました」とHEATベルトを手に安堵(あんど)の表情をうかべた。

17年4月のRIZINでのヒース・ヒーリング戦勝利以来、約2年ぶりの国内総合格闘技マッチで快勝した。引退表明した師匠のミルコ・クロコップ(44=クロアチア)にタイトル奪取の朗報を届けた。2年前の17年から単身でクロアチアに練習拠点を移し、ミルコ・クロコップのチーム入り。14年に2度対戦して負けた最強ファイターに直談判し、わずか8人の少数精鋭メンバーの1人として迎えられた。

クロコップの引退について、石井は「伝えたいことは本人に直接話しているので、これからも(ミルコ引退について)コメントはしないです」としながらも、石井関係者によれば「前からミルコの病状は把握していた」という。2年間も続けてきた東欧での密度の濃いクロコップ流トレを振り返り「自信になりました」。その言葉を証明するような圧倒的な勝利だった。

3月23日にはポーランドのアトラスアリーナで開催される東欧最高峰の総合格闘技興行KSW47大会に出場する。元KSWヘビー級王者フェルナンド・ロドリゲスJr.(31=ブラジル)との対戦が決定済みだ。「KSWに万全の状態で臨みたいと思っていた。安全に、ケガをしないように戦えました」とキッパリ。クロコップの本拠地ともいえる東欧でも「ミルコ魂」をみせて勝ち続けるつもりだ。