歓喜は一瞬で終わった。IWGPインターコンチネンタル(IC)王者内藤哲也(37)が、IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカ(32)とのダブルタイトル戦を制し、史上初の2冠を達成した。

前日のIC戦で王者ジェイ・ホワイトを破り、ベルトを奪取。大逆転を果たしたが、試合後にKENTA(38)の襲撃を受け、東京ドーム2連戦はまさかのバッドエンドとなった。

   ◇   ◇   ◇

最後にリングの中心にいたのは逆転の内藤だった。オカダのレインメーカーを2発連続で食らったが3発目をかわし、デスティーノをさく裂。コーナーによじ登り、久々に解禁したのはこの日引退したライガーから引き継いだスターダストプレス。体をひねりながら見事に決めると大歓声がさらに背中を押した。最後は再びデスティーノで3カウント奪取。35分37秒の死闘を制し、2年前と同じ舞台で敗れたオカダにリベンジした。

オカダとは若手時代、寮の2人部屋で一緒に暮らしたが、歩む道は分かれた。12年に先にIWGPヘビー級王者となったオカダはスター街道へ。一方、何をしてもブーイングを浴びる内藤は15年、失意のままメキシコへ。帰国してユニット「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」を結成し、予測不能のキャラクターで大ブレーク。18年1・4に初めてドームのメインに立ち王者オカダに挑戦したが敗れた。「東京ドームのメインイベント、最高に気持ちいいだろ。勝つと、もっと気持ちいいぞ」と屈辱の言葉を浴びていた。

2年ぶりに立った2度目のドームメイン。オカダから奪ったからこそ、その勝利は格別だった。試合後マイクを握り「オカダ、オカダ。東京ドームでのメインイベントでの勝利、ものすごく気持ちいいな」と呼びかける。肩を担がれ引き揚げるオカダも無言で拳を突き上げ、再戦を約束した。

昨年5月ごろから原因不明の体調不良に陥り、リングに集中できない日々が続いた。引退が頭によぎる中で「何かを残したい」という気持ちがふくらんだ。11月末からの3週間のオフで体の不安は解消し万全でドームを迎えたが、その思いは変わらなかった。史上初のドーム2連戦でオカダを倒し、プロレス史に名を刻んだ。

やっと果たしたオカダ超え。だが、その先にすぐ敵が待っていた。「ロス・インゴーベルナブレス…」。大合唱の次の言葉を言いかけた瞬間、ヒール集団バレット・クラブのKENTAに襲われ、夢は途切れた。キック、さらに必殺技「go 2 sleep」を決められ、ブーイングの中、内藤は無言でふらふらと控室に消えた。この日NEVER無差別級ベルトを失ったばかりのKENTAは「史上初? やらせるか。このままじゃ終わらないぞ」と宣戦布告。休む間もなく、不穏な2冠ロードが始まった。【高場泉穂】

◆内藤哲也(ないとう・てつや)1982年(昭57)6月22日、東京都足立区生まれ。06年5月デビュー。13年8月G1クライマックスで初優勝。メキシコ遠征から戻った15年に「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」を結成し、大ブレーク。16年4月にIWGPヘビー級王座初戴冠。180センチ、102キロ。得意技はデスティーノ。