新型コロナウイルス感染拡大の影響で興行を自粛している新日本プロレスなど国内プロレス7団体の選手、関係者が15日、都内で元文部科学相の馳浩衆院議員(58)に要望書を提出した。プロレスは選手間の接触が多く、観客席との距離も近いため、興行再開の見通しが立たない。苦しい自粛期間を耐えるため簡易検査キットの早期普及、選手の休業補償の2点を訴えた。

永田町の衆院議員会館に、スーツのプロレスラーの姿があった。新型コロナウイルス感染拡大の中、密集、密閉、密接の「3密」が当てはまるプロレス興行は、ほとんどが中止や延期。どの団体も興行が収入の大部分を占めるため、長期化すれば団体存続の危機にもつながる。そんな中、新日本プロレス、スターダムの親会社である株式会社ブシロード木谷高明取締役(59)を発起人とし、簡易検査キット早期普及、選手の休業補償について、プロレスラーでもある馳議員に要望書を提出した。

他のスポーツ、エンターテインメント界も止まっている状況。苦しいのはプロレス界だけではないと理解しながら動いたのは、補償という安心を得て長期の自粛後に無事興行を再開するためだ。木谷氏は現在、国内で開発が進む簡易検査キットの普及を求めたことについて「無観客試合をする上でも、選手の安心につながる」と説明。同時に、興行再開時に観客への安全、安心にもつながるとした。

休業補償を求めたのは、プロレスラーの多くが年俸制など団体と特殊な契約を結んでおり、社員でもフリーランスでもないため。国からの補償の対象となるかをスポーツ庁、経済産業省の担当者に確認。前年同月比で収入が半減した個人事業主に最大100万円を給付する「持続化給付金」で補償可能と説明を受けた。他にも団体、選手が利用できる補償があり、馳議員からも「つなぎ役になる」と協力を約束された。

各団体を代表して新日本プロレス棚橋弘至(43)、全日本プロレス諏訪魔(43)、ノア丸藤正道(40)、DDTのHARASHIMA、スターダム岩谷麻優(27)、東京女子坂崎ユカ、ディアナ井上京子(50)が出席。全員が現状を報告した。棚橋は「メジャースポーツのプロ野球、サッカー、大相撲が試合を再開し、プロレスはしんがり、一番最後でもいい。プロレスができるようになる時に、エンタメ、スポーツ業界が復活という形になる」と覚悟を示した。

団体の垣根を越えた異例の集結だが、集まったのは木谷氏が声をかけた一部にすぎない。馳議員は「苦言を呈するようですが…」と木谷氏に統一組織創設を要望。木谷氏も「今後、チャリティーやオールスター戦の実現のためにも、あったほうがいい。音頭をとりますよ」と前向き。苦難の時だからこそ、それを乗り越えるための“プロレス協会”設立が実現するかもしれない。【高場泉穂】