ボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28=大橋)が19日(日本時間20日)、米ラスベガスでIBF同級1位マイケル・ダスマリナス(28=フィリピン)との防衛戦(WBA5度目、IBF3度目)に臨む。18日に同地で臨んだ前日計量は挑戦者の約53・1キロに対し、約53・5キロでクリア。日本人初となる2戦連続「聖地」防衛成功へ、バナナ形サンドバッグの新兵器で鍛え続けた下半身の機動力を武器にKO勝利を狙う。

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最後のフェースオフで、井上はニヤリと笑った。早めににらみ合いを切り上げたダスマリナスの姿を確認すると、余裕の笑みで握手を求めた。2本のベルトを両肩に掛け、挑戦者の肉体を横目に「かなり絞っていい感じに仕上げているので、明日は気を抜かずに、しっかりとやるだけ」と気を引き締めた上で「100%しっかり仕上がりました」とオーラを漂わせた。

「今回もかなり高いパフォーマンスで、良い試合をみなさんにみせられると思う」と手応えを口にできるほど、下半身強化を続けてきた。ダスマリナス戦を想定したフィジカルトレーニングでブルガリアン・サンドバッグを導入。バナナの形をした東欧伝統のサンドバッグで、主にレスリング選手が腹筋や背筋、体幹を鍛えるための器具だ。15年末から井上のフィジカルを担当する高村淳也トレーナーの発案で、重心を低くするために担ぎながら俊敏性を高めるメニューを消化した。

約15キロの重量でバナナ型の特長あるサンドバッグを両肩に乗せ、低い姿勢を保つことを主眼とする練習を繰り返した。週2回のペースで指導する高村氏は「あと1センチ、2センチと体を沈めると力が乗ると(井上に)話した。重心が低くなると4方向の動きが自然に6方向、8方向へと増えるもの」と解説。井上の動きがさらに速く、幅広くなった。井上が「仕上がりはかなり順調。自分として納得できる仕上がりができました」と言える要素には、新兵器の効果もある。

「バナナ効果」で得た強靱(きょうじん)な下半身をいかしながら、破壊力あるパンチをねじ込むイメージはできているようだ。「最高の試合がみせられると思いますので、楽しみにしていて欲しいです」。聖地で初体験の有観客興行。全米生中継の大舞台で、再び井上がモンスターらしいKO劇をみせる。【藤中栄二】

◆放送 WBA・IBF世界バンタム級タイトル戦井上尚弥-ダスマリナス戦はWOWOWプライムで生放送、WOWOWオンデマンドでライブ配信される。