1月5日に行われる新日本プロレスの東京ドーム大会で、IWGP USヘビー級王者の返り咲きを狙う棚橋弘至(45)は、同ベルトへの強いこだわりを口にする。「アメリカで巻いてこそ意味がある。日本で防衛を重ねて、チャンピオンのままもう1度アメリカに帰りたかった」。

21年8月に米国でランス・アーチャーを倒して日本人初の王者になったが、同11月の大阪大会、KENTA戦で2度目の防衛に失敗。戴冠時に大歓声をくれた米国のファンへ、吉報を届けることはできず「中途半端に終わってしまった」と悔しがった。もう1度あのベルトを巻いて米国へ。挑戦の日へ、精進を続けている。

棚橋は、大好きなラーメンも、ジャンクフードも、お菓子も、全てプロレスのために我慢する。朝はおかゆとサラダチキン、昼夕はサラダとタンパク質の豊富な食材に加え、2~3時間おきにプロテインを摂取。「チートデイ」と名付けた好きなものを好きなだけ食べると決めた日以外は、規則的な食生活を365日、デビューから20年以上繰り返してきた。100歳までプロレスを続けるのが目標の1つ。昨年の11月で45歳になったが「200まで生きるつもりでいるから、100歳まで生きる人に比べたら実年齢は22歳。無意識下のうちに細胞を若返らせている。年齢に支配されない男になる」と笑顔で語った。

いつもニコニコ、超ポジティブな棚橋の原点は、初めてIWGPヘビー級のベルトを巻いた06年の北海道大会にある。当時は、K-1やPRIDEなどの格闘技の台頭もあり、プロレス界は低迷期。経営難、外国人レスラーがドタキャンで来日しないなどの問題も起こり、「苦しかった」と振り返る。そんな時に行われた大会で、新日本の頂点に立った棚橋の周りを、ファンが取り囲んだ。「よくやった」「おめでとう」の大声援。「こんな状況でも、こんなにも応援してくれる人がいる。そう思ったらもっと頑張らないといけないなと思った」。今も当時の思いが胸にある。ファンはもちろん、裏方やスタッフへの感謝も忘れない。

1月5日、王者KENTAとのタイトルマッチは、自身初となる反則裁定なしのノーDQ(Disqualificationの略、失格)マッチだ。椅子での攻撃や、ローブロー、場外乱闘など、ありとあらゆる反則攻撃が予測される。それでも、「怖さはない。死にはしないだろう」と強気だ。コロナ対策で歓声こそ聞こえないが、ファンの声はしっかりと届いている。「疲れない、落ち込まない、あきらめない」が、棚橋が掲げる逸材3原則。どんな苦難が待ち受けていても、何度でも乗り越える自信がある。【勝部晃多】