5日まで行われた東京ドーム大会でIWGP世界ヘビー級王座初戴冠、初防衛を果たしたオカダ・カズチカ(34)が、約5年ぶりとなったプロレスリング・ノアとの対抗戦で団体の実力を証明した。ノアのホープ清宮海斗をレインメーカーで撃沈。試合後は、コロナ禍で苦しむ日本をプロレスの力で盛り上げることを誓った。

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オカダが東京ドーム大会連戦の疲れもものともせず、渾身(こんしん)の力で右腕を振り抜いた。メインイベント2の最終戦、IWGP USヘビー級王者棚橋と組み、ノアのホープ清宮&レジェンド武藤組と対戦。中盤は必殺のレインメーカー(短距離式ラリアット)を何度も空振りするなど苦戦を強いられたが、24分35秒、清宮を三度目の正直のレインメーカーで葬った。6勝4敗1分けの勝ち越しで、対抗戦を締めくくった。

プロレスの力を信じている。オカダは試合後、「プロレスっていいですね」と満員の会場へ呼びかけた。対抗戦だが、プロレス界は「打倒コロナ」という1つの方向を向いている。「好き嫌いはあると思うが、戦うことで1つになった。コロナより先を見て『明日からしっかりやっていこう』という力を届けるのがプロレスラーです」と、すがすがしい表情で振り返った。

両団体の交流は、ノアが新体制に移行する前の16年末以来約5年ぶり。新日本プロレスの大張社長は「コロナ禍の日本にプロレスの力で元気を届けたい。戦後から70年にわたり、立ち上がる支えになってきたのは日本のプロレスです」と、このタイミングでの対抗戦の意義を強調していた。1日までにチケットは完売。この日もツイッターの日本トレンドで「#(ハッシュタグ)プロレスのチカラ」が上位にランクインするなど、団体の垣根を越えた選手たちの戦いは、日本中から注目を集めた。

新日本プロレスは3月6日で団体創設50周年を迎えるが、いまだに続くコロナ禍で先行きは見えない現状にある。5日の試合後、オカダは「声援のある中でプロレスがしたい。もう無観客に戻りたくない」と、涙を流した。それでも「50年先までオカダ・カズチカで食っていけるように盛り上げる」と言い切った。未来は明るいと信じて、レインメーカーは必死に右腕を振り続ける。【勝部晃多】