2度世界挑戦したプロボクシング元日本2階級制覇(ライトフライ級、フライ級)王者黒田雅之(35=川崎新田)が16日、現役引退を発表した。

同日、東京・文京区の日本ボクシングコミッションで会見。20年10月、井上尚弥、拓真兄弟とのスパーリングの際に左ひじの腱(けん)を断裂。手術を受けてリング復帰したものの、今年1月の重里侃太朗(仲里)との試合に敗れた後、同部の痛みが増していたという。

2週間ほど今後について考え、引退の結論に至ったと明かした。

周囲からは現役続行の激励も受けていたが「『まだやりますよね』と言われるのはうれしいですが、終わりが分からず、区切りが分からなくなっていた。辞めるのは今しかない、と。(違和感がある状況でも)100%やれると思うが、自分の思い描く100%とは違ってくる。それはボクシングに失礼だと思った」と率直な心境を明かした。

13年2月、WBA世界フライ級王者ファン・カルロス・レベコ(アルゼンチン)に挑戦し、19年5月にはIBF世界フライ級王者モルティ・ムザラネ(南アフリカ)にも挑んだが、いずれも判定負け。世界王座はつかめなかったが「ボクシング人生の彩りになる景色は見ることができた」とすっきりした表情をみせた。

12年7月に「モンスター」井上尚弥のプロテストの相手を務め、練習パートナーとして何度もスパーリングをしてきた関係にある。「光栄なことですよね」と振り返りつつも「井上尚弥選手とスパーリングしていた、日本王者だ、と言われることがあっても『そんなこともあったよね』と言えるように自分を高めていきたい」と引退後のキャリアに強く目を向けている。

ムザラネ戦後からプロボクサーと並行し、訪問介護サービスの会社「そえるて」で働いてきた。現在は同社でフルタイムで社会人生活を続けている。

ボクシングのキャリアを生かし、何らかの形で老若男女に向けてスポーツの楽しさを伝えていくという第2の目標を持っており「挑戦していきたいと思います」と決意も新た。

所属ジムの新田渉世会長は「しっかり『卒業』させられたと思う。この経験を次の人生に生かしてほしい」とエールを送っていた。