横綱大の里(26=二所ノ関)が、涙の復活優勝を果たした。3敗で並ぶ大関安青錦(22=安治川)との相星決戦を制して、1年ぶり6度目の頂点。2差リードから連敗の危機を乗り越えた。昨年11月に左肩を負傷し、5場所優勝なしは“自身最長ブランク”だった。東京では5度目、秋は3連覇と得意の場所で、6場所ぶりに頂点に返り咲いた。

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364日ぶりの表彰式。大の里の目に、いつもと違う風景が広がっていた。土俵脇に立ち、君が代を口ずさむ。「きーみーがー…」。たった3文字、言葉が続かない。涙がほおをつたう。左手で目を拭った。唇をかみ、必死にこらえる。歌い切ると、右手で目元を押さえた。頭をよぎったのは、苦しんだ日々。「すごく長い1年だった。けがをした時、どうなるかと思った。この景色だけを見たかった」。過去に4度味わった国技館での優勝。今日だけは、見えた世界が違った。強い横綱が、帰ってきた。

こんなに優勝から遠ざかったことはなかった。昨年秋場所は横綱昇進後の初優勝。新入幕から11場所で5度目の頂点。「甘く見ていた部分もあった」。そう振り返るのも無理ないほど、順調だった。風向きが変わったのは昨年11月。九州場所13日目に安青錦と対戦し、左肩を痛めた。「順風満帆でこれからって時にけがをして、失速して。そこから先が真っ暗になった」と明かす。初の途中休場。完治しないまま初場所は強行出場。春、夏は土俵を空けた。「思い通りの相撲が取れなくなった。また優勝できるのかな、と考えた日もあった。大丈夫かなって」と大きな壁にぶつかった。

稽古場以外でもトレーニングを積み、復活を期した。二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)は「『強くなるんだ』という気持ちでやっていた」と振り返る。名古屋場所は9勝6敗で「悔しさも恥ずかしさもあったと思う」。2ケタ勝利に届かずとも土俵に立ち続けたことが、今場所につながった。

前に出る相撲を取り戻し、12日目まで1敗。「途中で余計なことを考えた」と横綱の頭に優勝がちらついた。2差から一転、連敗。千秋楽で、初の相星決戦にもつれ込んだ。朝起きて、心に誓った。「腹を決めてやるしかない」。負傷時に対戦した安青錦に、両腕での突き押し。相手に何もさせず、2秒6で土俵の外に追い出す完勝劇を見せた。

6場所ぶりに賜杯(しはい)を抱き、優勝パレードで左腕を高く掲げて声援に応えた。「少し余韻に浸って九州で頑張りたい。ハイレベルな優勝をしていかないと」と全勝への思いをのぞかせた。優勝6度のうち東京5回、大阪1回。まだ九州での頂点はない。次の栄冠は、またきっと違う景色が見える。【飯岡大暉】

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