那須川は、17年12月に自伝本「覚醒」を発売した。出版にあたり編集協力したフリーライターの茂田浩司氏(55)が、「人間・那須川天心」を解説した。【取材・構成=藤中栄二】

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格闘技取材歴26年の茂田氏が初めて那須川の試合を取材したのは14年7月。15歳のプロデビュー戦だった。キック団体RISEのバンタム級7位、有松朝を58秒殺した瞬間を見届け「選ばないと対戦相手がケガをすると感じた」と振り返る。「格闘技の歴史を塗り替える人」と自伝本の製作を提案。19歳の神童は生きざま、覚悟、すべてが興味深かったという。

◆天心の由来 「父弘幸氏に『天に心を持て』と命名されたと。天のような大きな心を持ち、感謝の気持ちを持ってほしいと願いが込められているそうです」

◆資質 「父弘幸氏は、中学時代にサッカーで全国制覇した経験の持ち主。母由美子さんは底抜けに明るい。運動神経は父、ポジティブ思考は母譲りかなと。普段は感激屋でよく泣く。優しい人柄です」

◆元GK 「サッカーを始めた当時の那須川はGKだったため、弘幸氏は『センスがない』と判断。礼儀に厳しいから、と空手を習わせたそう。那須川が空手で負ける姿を見た弘幸氏が悔しくて教えはじめたことが、格闘技のきっかけ」

◆定時制 「プロ練習に出るために定時制に通ったと知ったことが、一番驚いたこと。松戸南高で競技のために定時制に入った初めての学生だったと。人生を懸ける決意が違いますね」

17年8月、那須川がサッカーW杯アジア最終予選(日本-オーストラリア戦)を観戦した後に「日本の本大会出場はうれしいが、僕は悔しい」とつぶやいたという。茂田氏は「この熱狂を格闘家がつくれないのか。世界を動かす格闘家になりたいと話していました」と感慨深げ。那須川の意識は常に「対世界」にある。