前4団体統一バンタム級王者でWBC、WBO世界スーパーバンタム級1位の井上尚弥(30=大橋)が同級初戦でいきなり世界ベルト2本奪取に成功した。

WBC、WBO同級王者スティーブン・フルトン(29=米国)に挑み、8回1分14秒、TKO勝利で無敗対決を制した。8回に同級最強といわれる統一王者から、右ストレートからの左フックでダウンを奪い、その後はラッシュで攻め続けレフェリーストップ勝ち。世界戦20連勝とし、国内2人目の世界4階級制覇を成し遂げた。

 

鋭い一撃が、動きの鈍くなった統一王者に入った。8回、井上が右ストレートでフルトンの顔面を打ち抜いた。さらに返しの左フックを強振し、ダウンを奪った。立ち上がってきた相手に容赦はしない。さらにラッシュを浴びせロープに追い詰めたところで、レフェリーが割って入り、TKO勝ち。倒した瞬間に1度ガッツポーズ。勝負を決めると挑戦者の青コーナーによじのぼり、約1万5000人のファンに勝利を報告した。

スーパーバンタム級初戦で同級最強といわれる無敗の統一王者を沈めた。「すごくスピード、パワーが乗り、充実した試合がこなせた。それでも、初戦で練習でまだこうしたらいいのではないかと(いう課題が)見えましたし、リカバリー、減量方法は改善するところが山ほどある。まだまだスーパーバンタム級で強い姿をみせられる」と、自信に満ちた表情で2本の世界ベルトを両肩にかけた。

フルトンよりも身長4・5センチ低く、リーチも8センチ短いが、体格面は関係なかった。ロープ、コーナーに追い詰め、自らの距離で両拳を打ち抜き、ダメージを与えた。

ラウンド間のインターバル1分間で最大限の体力回復を可能にする肉体が完成していた。5月から正式に大橋ジムに加入した12年ロンドン五輪ウエルター級代表の鈴木康弘トレーナーの所属先となる自衛隊で導入される「耐乳酸トレ」を5月下旬から最終調整ギリギリまで消化。乳酸による筋肉の疲労に耐える肉体作りのため、ひたすらサンドバッグを連打するメニュー。ロングスパーリング後も必ず取り組んだ。

総スパーリング数は通常よりも50回多い計150回まで増加。10回を1度、8回を2度も取り組めたのも、1分間のインターバルで回復できる肉体を身に付けたことが大きい。井上は「理にかなっている練習だった」と手応えを胸にフルトン戦に臨んでいた。

リングサイドにはWBAスーパー、IBF世界同級王者マーロン・タパレス(31=フィリピン)が視察。井上はリングに呼び込み「(フルトンを倒し)スーパーバンタム級最強と言えるのではないかなと。僕が持っているベルトは2本。今年中に2本のベルトをかけて戦いましょう」と宣言し握手を交わした。年内の4団体王座統一へ道筋を自ら演出し、メインを締めくくった。【藤中栄二】