WBC世界ミニマム級暫定王者・重岡優大(27=ワタナベ)が、王座統一に成功した。V4防衛中だった同正規王者パンヤ・プラダブシー(32=タイ)との団体内王座統一戦に臨み、3-0(119-109×2、117-111)の大差判定勝ちを収め、初防衛にも成功した。相手のパンヤは、50戦無敗で引退した元5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(米国)を上回る54連勝で同王座を12度防衛してきた王者ワンヘン・ミナヨーティン(タイ)から王座奪取した難敵だった。タイの絶対王者を下し、実力を証明してみせた。

試合前には弟でIBF世界ミニマム級暫定王者だった銀次朗が、正規王者ダニエル・バラダレス(29=メキシコ)との団体内王座統一戦を制した。その勇姿に刺激を受けないわけがなかった。

重岡は何度も「しょっぱい試合をしてしまった」と悔しがった。終始、攻め続けて何度も強烈なパンチを打ち込んだが、パンヤは倒れることはなかった。3-0と大差の判定勝ちだったが、最終12回までもちれたことが納得いかなかった。ただ、「こういうことをいってもしゃーないので喜びます。自分をほめたいですね」と笑顔もみせた。

4月16日に1度はパンヤへの挑戦が決定しながら、世界戦の約2週間前に王者のインフルエンザ感染が判明。急きょ設置された同暫定王座決定戦で元WBO王者ウィルフレド・メンデス(プエルトリコ)で7回KO勝ちし、プロ7戦目で世界王座を獲得した。6月にパンヤが田中教仁(三迫)との復帰戦で勝利し、4度目防衛に成功したことを受け、ようやく組まれたパンヤ戦だった。

メンデスとの暫定王座決定戦で7回KO勝利して世界ベルトを手にした重岡は素直に喜んでいなかった。「前回の試合は僕の中で世界戦のイメージがなかった。今回はしっかり王者(が相手)なので、今回は初めての世界戦の意気込み」と率直な心境を明かした。いつもは家族、友人ら応援してくれる人たちを思って戦うが「今回は僕が小さい頃からやってきたことをムダじゃなかったと証明する。自分のために戦おう」とリングに立った。

父功生さんの勧めで始めたボクシング。テレビで世界戦中継をチェックし、長谷川穗積や亀田興毅ら世界王者がファイトする舞台にあこがれてきた。重岡は「小さい頃、世界王者をテレビで見ている時から僕もここに立つんだと思ってやってきた。前回(のメンデス戦)は夢の舞台ではなかった。今回は王者に挑戦する気持ちがある。俺が王者にふさわしい。しっかり実力、今までやってきた格闘技人生すべての力を出し切れればいいと思う」と燃えていた。

熊本・開新高では高校4冠、名門・拓大進学後も18年の全日本選手権を制覇してアマ5冠となった。3年まで通った大学を中退し、19年10月にプロデビュー。日本ユース王座(ライトフライ級)、WBOアジア・パシフィック王座、日本王座(ともにミニマム級)を獲得し、プロ7戦目で暫定ながら世界王座も獲得。そして8戦目で団体内で王座統一にも成功した。「本当のチャンピオンは俺だと証明するだけ」。有言実行で重岡が「真」のWBC王者となった。

今後は2団体統一を見据えた。ターゲットはWBO同級王者オスカー・コラーゾ(米国)。「WBOにやりたいヤツがいて。アマチュア上がりでプロ戦績も俺と同じぐらいで。同い年。イケイケの調子のったヤツがいるらしいんで、そいつとケンカボクシングできたらいいなと。次も楽しみにしていてください!」。兄弟で正規王者となったこの日、新たな目標を掲げた。