<プロボクシング:WBA世界フライ級タイトルマッチ12回戦>◇29日◇千葉・幕張メッセ国際展示場第8ホール◇観衆2800人

 WBA世界フライ級王者の坂田健史(28=協栄)が粘りのボクシングで3度目の防衛に成功した。同級7位の山口真吾(28=渡嘉敷)の右強打を浴びて3回にダウンを喫したが、中盤からの反撃でポイントを挽回(ばんかい)。バッティングで右目上を切るピンチも乗り越え、3-0の判定勝ちした。前戦に続く序盤のダウンで、スロースターターの課題は残ったが、持ち前のスタミナと不屈の闘志で、注目のフライ級戦線で生き残った。

 鮮血で赤く染まった白のトランクスが、思わぬ苦闘を物語っていた。ライトフライ級から1階級上げた山口との3度目の防衛戦。坂田が身長差で7・1センチ、リーチ差で5センチと体格で上回った。有利の声が多かった中、ダウンを乗り越えての判定勝利。「本当に厳しい試合になった」と心からホッとした笑みを見せた。

 またも悪夢からのスタートだった。3回、山口の右ストレートでひざから崩れ落ちた。昨年11月のデンカオセーンとのV2戦でも初回に倒れた。2戦連続のダウンも、ラウンドの終了間際だった前回と違い、今回は開始早々。KO負けの危険もあったが、3度の世界挑戦失敗など、修羅場をくぐった男はしたたかだった。

 「しまったと思ったけど、逆に冷静になった」。ダウンした3回を防御専念で乗り切ると、4回以降は得意の接近戦に持ち込む。ショートフック、ボディーを的確に放ってポイントを奪い返した。5回の右目上カットも焦らない。7回以降は持ち前のスタミナをいかして手数で圧倒。3-0の判定勝利につなげた。

 04年6月の世界初挑戦では序盤にあごを骨折しながら立ち続けた根性を持つ。今年1月には、急性胃腸炎にかかるピンチに見舞われた。医者から入院を勧められたが、薬をもらっただけで、そのままジムに向かった。「この1日のせいで負けたら悔しい。試合ではどんな状況でも戦わないといけないんです」。地味で平凡な練習の繰り返しが、逆境への強さをはぐくんでいた。

 戦前はKO宣言もしていただけに、スロースターターの課題は残る。本人も「今日の内容で偉そうなことは言えない」と控えめに話したが、心の中は別だ。しっかりとWBC王者内藤大助との王座統一戦を見据える。亀田も加えた三つどもえで盛り上がるフライ級戦線。坂田は性格通り、地道に勝ち続けることで、存在感を示していく。【田口潤】