<ノア:東京大会>◇6日◇東京・日本武道館◇1万1500人

 佐々木健介(42=健介オフィス)が史上初のメジャー3大タイトル制覇を成し遂げた。ノアのGHCヘビー級王者・森嶋猛(29)を22分2秒、北斗ボムからの片エビ固めで撃破した。新日本時代の97年8月に故橋本真也さんから奪ったIWGPヘビー級王座初戴冠から11年。07年8月には全日本の3冠王座も奪取。その後もトップレスラーとしての実力を維持し続け、ついに前人未到の偉業を達成した。

 自分より30キロも重い145キロの巨体を担ぎ上げた。佐々木はこん身の力を込めた北斗ボムで、王者をマットにたたきつけた。レフェリーと場内の声が1つになった3カウント。プロレス界に新たな歴史が刻まれた瞬間だった。「何度も意識が飛んだ。あの王者に勝ってベルトを巻けることがうれしい」。今最も勢いのある29歳を粉砕しての戴冠。42歳の新王者は肩で息をしながら言った。

 31歳で新日本のIWGPのベルトを巻いた。それから11年の歳月をかけて全日本の3冠、そしてGHCの3大メジャー王座を制した。03年12月のフリー宣言以来、団体の枠を超えて手抜きなしの全力ファイトで戦ってきた。06年には左目眼窩(がんか)底骨折の重傷も負った。それでも戦い続けた。この日の22分2秒には苦闘のプロレス人生が凝縮されていた。見守った妻の北斗晶(41)は「いっぱい挫折もあった。ここまでこれたんだなあと不思議な感じ」と振り返った。

 デビュー23年の大ベテランだが、キャリアにあぐらをかくことはない。今も試合前の準備には全力を注ぐ。今回は森嶋の必殺技「岩石落とし」対策に、同技の名手だったマサ斎藤氏の指導を仰いだ。防御法はもちろん低い体勢からねじるように投げる攻撃法も学んだ。この日、森嶋から受けた同技は1発のみ。逆に佐々木は同技で3度王者を投げ飛ばした。

 8月末には福島・いわき市で1泊2日の合宿を敢行。消波ブロック上でのスクワット、海中でのスパーリングなど、練習でも貪欲(どんよく)に新たなメニューを取り入れている。この向上心こそが佐々木の強さを支えている。快挙にも浮かれた様子はみじんもない。「おれはだれの挑戦も受けますよ。明日でもあさってでも、どこでもやってやる」。新王者の叫びがリングにこだました。【塩谷正人】