「稀勢の里関が3時間も正座させられました。日刊さんのせいですよ」。ある人からのささやきに仰天した。原因は、08年夏、モンゴル巡業での写真。鳴戸親方(元横綱隆の里)が紙面を見るや、激怒したというのだ。瞬間、私は「鳴戸部屋法度」を思い出した。

 一、過酒、色、煙草は厳禁のこと

 写真を見ると、稀勢の里はほおを赤らめ、美女の背中に手を添えてニヤけている。これが「過酒、色」違反の証拠になり、帰国後に正座で説教を受けたと…。

 私は恐縮しながら稀勢の里の所へ行くと、「大丈夫っす」。そんなことがありながら、気遣いも見せてくれた。08年日刊年間3賞の殊勲賞に決定したことを伝えるや、「マジっすか。でも、取材は後にしてください。携帯の番号を教えますから」と返した。「力士は寡黙であれ」と教えられ、部屋でペラペラと話すことはできなかったからだ。

 約束通りに電話をすると、冗舌に答えてくれた。だが、私はその寡黙な印象を守るべく記事ではコメントを少なめにした。親方は「いい内容だ。これからも萩原をよろしく」と大喜び。少し稀勢の里に罪滅ぼしができた気がした。【06~09年大相撲担当・柳田通斉】