横綱稀勢の里(31=田子ノ浦)が21日、日本相撲協会に「腰部挫傷、左足前距腓靱帯(じんたい)損傷で約1カ月間の安静加療を要す」との診断書を提出して休場した。4場所連続5度目の休場。
9日目に平幕の宝富士に敗れ、ワースト記録に並ぶ1場所5個の金星を与え、4勝5敗と不振だった。横綱では鶴竜、日馬富士に続く休場で、昭和以降初の2場所連続3横綱不在となった。
10日目の朝、福岡・大野城市の宿舎で師匠の田子ノ浦親方(元前頭隆の鶴)が、稀勢の里の休場を明かした。「(前日20日夜に)『明日から休場してもいいですか』と話してきた。今朝も様子を見て相談した結果、休場せざるを得ないと判断した。足首も腰も、いろいろな所をかばって、痛みが引かずに力が入らない」と休場理由を説明した。
春場所で負傷した左上腕付近はほぼ回復していたが、名古屋場所で痛めた左足首を場所前に悪化させていた。番付発表翌日の10月31日から2日続けて、大関高安相手に三番稽古を行った。3場所連続休場からの復活を印象づける激しい相撲で、仕上がりは順調そうに見えた。しかし、2日に落とし穴にはまった。突然、高安との三番稽古を中断して左足首にテーピングを施した。土俵に上がる前に外したが、11番取った後すぐに稽古場の裏に姿を消した。5分後には戻ってきたが、裏には大量の氷水が入ったバケツと椅子が用意されていた。アイシングをした後なのか、バケツの周囲はぬれていた。
7日の二所ノ関一門の連合稽古も途中で切り上げ、翌8日は休んだ。「もともと休むつもりだった」と強がったが、実際は安静をとったとみられる。場所中も朝稽古や支度部屋で、左足首をしきりに自分の手でもんでいた。腰の負傷については左足首をかばううちに悪化した。
同親方は来年初場所の出場について「それを目指して頑張る」と話したが、全休を含む4場所連続休場で、周囲から厳しい目で見られるのは必至。進退については「今はそんな余裕はない」と多くは語らなかった。ただ、4場所連続休場中の鶴竜、暴行問題で揺れる日馬富士も厳しい立場に立たされており、3横綱そろって進退問題浮上の可能性もある。春場所からの豪華4横綱時代が、早くも終わりの危機を迎えている。【佐々木隆史】
◆横綱の連続休場場所 年6場所制となった58年以降、最長は貴乃花が01年名古屋~02年名古屋まで全休した7場所連続休場。続いて6場所連続で柏戸、北の湖、武蔵丸の3人、5場所連続で大鵬がおり、稀勢の里の4場所連続休場は、今場所の鶴竜と並んで8例目(北勝海が2度)。4場所連続以上の休場明けで優勝したのは大鵬、柏戸、北勝海の3例だけで、4人が引退している。昭和以降に区切れば、3代目西ノ海が8場所連続で休場している。