今年6場所すべて幕内に在籍した力士の中で、最も番付が上下した「ビッグウエーブ賞」は、隠岐の海(32=八角)に輝いた。今年の最高位は夏場所の東前頭2枚目だったが、2場所連続負け越しで秋場所は西前頭14枚目まで急降下。実は秋場所前に「やっぱり幕内は魅力があるから、十両に落ちたらやめるつもりでいた」と心に秘めていた。これを8勝7敗でしのぐと、九州場所は11勝4敗。同部屋の北勝富士とともに横綱白鵬に独走を許さず、最後まで優勝争いを展開した。

 2度の2ケタ白星と、3度の2ケタ黒星で、年間では25枚も番付が上下した。波があったのは、度重なる体調不良の影響。満足に稽古できない時期もあり「今年はきつかった」と本音を漏らす。38歳の今も幕内で取り続ける豪風に助言を求めながら筋力トレーニングに励み、「やることをやった。これでダメなら仕方ないと思えるようになった」と吹っ切れた。

 今では「ビッグウエーブ賞」にふさわしい考えに達したという。「安定はいらない。いつも勝負したい。しっかり勝負できる体づくり、心づくりをしていきたい。もう一花咲かせて、と周りから思われて取るのが気持ちいい」。再び横綱、大関と勝負する日を心待ちにしている。【高田文太】