日本相撲協会は2日、東京・両国国技館で役員候補選挙の投開票を実施。理事候補選で初当選を果たした阿武松親方(56)は、貴乃花一門のトップに立つことの重みをかみしめるように、言葉を選んだ。「仕事をさせていただく可能性ができたので相撲協会の一員として、ファンの皆さんに愛される、そして活力ある組織にしたい」。いつもの柔和な顔ではない。事実上の所信表明を終始、引き締まった表情で口にした。

 一門としての痛手は負った。総帥の貴乃花親方が理事選で、志を追い合流した無所属の錣山親方は副理事選で完敗した。それは目に見える「票」という数字であり、意義は別のところにある-。無防備で選挙戦に飛び込んだ総帥の志は受け継ぐつもりだ。貴乃花親方の落選を問われて「大切な仲間、友人。今回投票していただく(投票選になる)ことが協会の活力になると思って(立候補を)届けさせていただいた。投票していただくことが大事なんです」と大義を強調した。

 現役時代、横綱千代の富士になぞらえて“白いウルフ”の異名で人気を得た。一時は部屋の不祥事などで昇格見送りなどの憂き目にあったが、心血注ぐ覚悟はできた。再び総帥の落選を受け「私が一生懸命、仕事をさせていただきたい」と力を込めた。

 ◆阿武松広生(おうのまつ・ひろお)本名・手島広生、元関脇益荒雄。1961年(昭36)6月27日、福岡県生まれ。押尾川部屋に入門し、79年春場所初土俵。85年秋場所新入幕。87年名古屋場所新関脇。90年名古屋場所限りで現役引退。年寄「錣山」から92年9月に「阿武松」を襲名し、94年10月に阿武松部屋創設。小結若荒雄(現不知火親方)、小結阿武咲らを育てた。2010年1月に二所ノ関一門を離脱し、貴乃花一門に所属。現在は巡業部、指導普及部。