大相撲の貴乃花親方(45=元横綱)が23日、内閣府公益認定等委員会に提出していた告発状を、取り下げる意向を示した。春場所13日目を行った会場のエディオンアリーナ大阪で明らかにした。告発状は、元横綱日馬富士関による弟子の十両貴ノ岩への暴行事件に関連して、日本相撲協会の対応を問題視し、今月9日に提出したもの。だが18日に弟子の貴公俊(たかよしとし)が付け人に暴行して以降、謝罪に次ぐ謝罪。自身を「一兵卒」と表現し、出直しを誓った。

      ◇       ◇

 もしも貴乃花親方がいなかったら-。内閣府への告発も、もちろん取り下げもなかった。この間、内閣府の動きが表面化することもなく、まさに貴乃花親方の独り相撲といえる。告発状の提出が春場所初日の2日前で、この日は同13日目。土俵の熱戦に水を差し、錦戸親方は「盛り上がっているのは土俵外ばかり」と嘆いた。暴力問題再発防止を掲げた2月の研修会を貴乃花親方は欠席し、その結果、弟子が暴力問題を起こした監督責任は重い。

 そもそも貴乃花親方がいなければ、元日馬富士関が書類送検されるどころか、暴行が表面化することもなかったかもしれない。そうなれば研修会も開かれず、貴公俊の暴力問題発生と同日に発表された、峰崎部屋の暴力問題が発覚することもなかっただろう。ここ5カ月ほど続く相撲界の危機感は生まれず、暴力根絶の雰囲気も生まれなかったはず。手法には賛否両論あるが、貴乃花親方という「劇薬」がもたらした約5カ月の効果が出るのは数年後かもしれない。【高田文太】