結び前の一番に、両国国技館は地鳴りのような大歓声と、その後の時ならぬ遠藤コールに包まれた。異様な熱気の中、前人未到の優勝回数43回の大横綱が、転がされていた。

横綱白鵬(34=宮城野)に挑んだ東前頭筆頭の遠藤(29=追手風)の一番。ケンカ四つ同士の一番は、遠藤が自分有利の左四つに持ち込み、白鵬の連続の上手投げを強靱(きょうじん)な足腰で残し、最後は左足をかけるように、ひねりながらの切り返しで白鵬をひっくり返した。

白鵬が横転する姿に、八角理事長(元横綱北勝海)も「なかなか白鵬の、こういう負け方は見たことがないね」と少々、驚きの様子。熱戦の相撲には「白鵬も足腰がいい。最初の(遠藤の)外掛けで食ったと思ったけど、よく残った」と負けた白鵬を評価しつつ、一方の遠藤も「連続の(白鵬の)上手投げをよく残した」と熱戦をほめた。その要因として「強い白鵬がいるからこそ、こうして盛り上げる。遠藤も今日の相撲は立派。ここで浮かれるような力士ではないと思うから、明日からもやってくれるだろう」と場所の主役候補であることに期待した。

土俵下で審判長を務めた藤島審判副部長(元大関武双山)も「あれだけ白鵬が背中から落ちることは、あまりないでしょう」と話した。勝因については「遠藤が左を差せたこと。先場所と同じ立ち合いで、白鵬は左を張って右はかち上げ。それを読んで遠藤は、食わないように左はズラしながら当たった」と分析した。白鵬の最近の傾向として「左でも取れるが本来は右四つ。ここ一番で負けるのは左四つが多い」とした。2日連続金星の遠藤には「(序盤に)上位とやって燃え尽きる人もいる。(また連続金星で)変なプレッシャーになることもある。ここからです」と話しつつ「ここ最近、力をつけている。いかに平常心でいけるか」と期待した。