西前頭9枚目阿武咲(24=阿武松)が、無傷の5連勝で単独トップに立った。巨漢の西前頭7枚目碧山を鋭い出足で電車道。新入幕の翔猿が初黒星を喫し、5日目終了時点で平幕が単独トップに立つのは、17年秋場所、21歳だった自身以来となった。今場所から仕切りの位置を変え、初日から13連敗を喫し、2勝止まりと苦しんだった7月場所の“数倍返し”に挑む。大関貴景勝、関脇正代ら7人が1敗で序盤戦を終えた。

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阿武咲は2度つっかけても慌てなかった。3度目で呼吸が合うと、177センチの“低さ”を生かしてまず191センチ、188キロの碧山を突き起こし、たちまち引かせた。「変化があるのでギリギリまで見た。肩の力が抜けている」。先場所は初日から13連敗し2勝止まりだったが、今場所は初日から5連勝。翔猿が敗れ、3年ぶりに5日目終了時点でのトップに躍り出た。“倍返し”を軽く超える勢いで勝ちっぱなしだ。

7月場所、初日からの13連敗は同一場所では歴代9位タイとなる不名誉記録。「今まで相撲をやってきて、一番つらかった」。10日目から締め込みの色をえんじから紺に変更。流れを変えようと、わらにもすがる思いだったが連敗は簡単には止まらなかった。「あれ以上はない。何があってもくじけずやっていく。(今場所は)気持ちの持ちようが違う」。どん底を味わった経験が生きている。

工夫した仕切り線の立ち位置が、功を奏している。初日から左足を前に出し、相手のやや右斜め前で仕切って立ち合う。「いつも正面で当たって負けていた。ちょっとずらしてやってみようと。うまくはまっている」。

中盤戦も原点回帰の押し相撲で突っ走る。先場所は差して攻める相撲もあったが「基本は押し相撲。型はどうあれ押していく」と決意は固い。すでに、2度の幕尻優勝がある2020年。両横綱の休場で混沌(こんとん)とする秋場所も、三役経験を持つ24歳が波乱を巻き起こしそうな勢いだ。【佐藤礼征】