幕尻の快進撃が止まらない。東前頭17枚目の志摩ノ海(31=木瀬)が竜電を下手出し投げで下し、1敗を守った。幕内での11勝は自己最多。

13日目は結びで大関貴景勝との「1敗対決」が組まれた。初優勝が現実味を帯び、地元の三重・志摩市もバタバタの優勝準備を開始した。小結照ノ富士が大関再昇進の起点となる2桁10勝目をあげた。

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勝ち運に乗っている。突き押し相撲の志摩ノ海が、まわしをとっても勝ち星を引っ張ってきた。「流れなのかなと思います」。組み止めて左からの下手出し投げを鮮やかに決めた。「何も考えないで自分の相撲を取りきるだけ」という無心の境地で幕内で自己最多、11個の白星を積み上げた。

13日目は、大関貴景勝と結びで「1敗対決」が組まれた。幕尻の快進撃が「割り崩し」を生んだが、取組後、「明日の取組は見てません」。部屋に戻って、師匠の木瀬親方(元幕内肥後ノ海)から対戦相手を知らされ、助言をもらうのが通例という。「明日の取組は何も考えていない。いい相撲をとるだけで、帰ってから師匠に聞きます」が、曲げない姿勢を物語る。

一方で初優勝の好機に地元はバタバタしてきた。三重・志摩市役所の関係者は取組前、「今日の結果次第で動きだしたいと思います」。垂れ幕の準備。新型コロナウイルス感染症の影響を考慮しつつ、パブリックビューイングや凱旋(がいせん)パレードの可能性も探る。三重県出身力士では83年初場所の大関琴風以来37年ぶり。機運は確実に高まってきた。

今年初場所、徳勝龍の優勝パレードで旗手を務めた。その光景が忘れられない。「人がいっぱいいて、旗手をやらせてもらってよかったと思う。旗手をやったからにはその横(優勝者)に座りたいとだれもが思っている」。コロナ禍でパレードは実現しないが主役の座は奪える。夢を現実に。13日目に大一番を迎える。【実藤健一】

◆志摩ノ海航洋(しまのうみ・こうよう) 本名・浜口(はまぐち)航洋。1989年(平元)7月11日、三重県志摩市生まれ。和具中(現志摩中)-明徳義塾高-近大。12年夏場所初土俵。16年名古屋場所新十両。19年夏場所新入幕。同場所10勝で敢闘賞。最高位は東前頭6枚目。幕下を除く各段で優勝(十両は2回)。179センチ、160キロ。得意は突き、押し。