大関復帰をほぼ手中に収めている関脇照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が、昨年7月場所以来3度目の優勝に王手をかけた。結びで大関朝乃山を寄り切り3敗を堅守。先頭を並走していた小結高安が平幕の翔猿に敗れて4敗目を喫したため、単独トップに立った。優勝の可能性は照ノ富士と1差で追う3人に絞られた。4敗の大関貴景勝が照ノ富士と直接対決、高安と平幕の碧山の4敗対決が組まれた。

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相手の出方が変わっても、照ノ富士は落ち着いていた。朝乃山のもろ手突きはじくような鋭い踏み込みから右四つ、左上手。右でかいなを返しながら、じっくり体を寄せた。朝乃山にはこれで昨年7月場所の初顔から5連勝。まわしを求めにきた過去の対戦とは違う相手の立ち合いだったが「落ち着いていけば大丈夫だと思っていた」と“先輩大関”の貫禄がにじみ出ていた。

3度目の賜杯に王手をかけたが、千秋楽で貴景勝に敗れれば優勝決定ともえ戦にもつれ込む混戦模様。初優勝した15年夏場所も、14日目終了時で1差に8人がひしめく大混戦だった。

照ノ富士の付け人を約5年間務めていた元幕下駿馬の中板秀二さん(39)は「あのときはトップを並走しているのが横綱(白鵬)だったので(挑戦者として)気持ちの余裕があったと思う」と当時を振り返る。今回は単独先頭で追われる立場。重圧がかかるが、中板さんは「大関(昇進)が確実となったからといって、気持ちが切れてしまうのはダメ。(大関から)落ちてから、1つ1つ目標を達成してきたので大丈夫だと思う」とエールを送った。

残り一番に向けて照ノ富士は「どんな相手にも自信を持ってやらないと勝てない。明日1日頑張ります」と力強い。3度目の優勝を果たせば、横綱白鵬を除いて現役最多。確実とした大関返り咲きに、花を添える。【佐藤礼征】