日本相撲協会の諮問機関である横綱審議委員会(横審)の定例会合が24日、東京都内で開かれ、矢野弘典委員長(産業雇用安定センター会長)が報道陣の代表取材に応じた。

コロナ禍にあっての夏場所開催について「協会や関係の皆さんの努力のたまもの」と、まずは興行開催を評価した後、優勝した大関照ノ富士(29=伊勢ケ浜)について言及。「どん底まで落ちて、よくここまで戻ってきたなという称賛の言葉があり、ファンの心をつかんだと思う。優勝のインタビューも浮かれたところが全くなく、好感が持てたと私自身は思う」と称賛。他にも「貴景勝が最後までよく頑張ったと思う。遠藤もそう。本当に場所を盛り上げた力士で、また若手でも若隆景とか、なかなか頼もしい力士が表れてきた。これからもっと一層活躍してほしいと思う」と期待した。

その上で照ノ富士の綱とりとなる7月の名古屋場所について「他の大関も含めて、みんなで競い合ってほしい」とした上で、照ノ富士については「今の気持ちをしっかり持って、いい成績を挙げてほしい。それを心から願います。また、それを簡単に許さない他のライバルの力士もいる。みんなで頑張っていただき、それで素晴らしい相撲が毎日続けば、よい結果につながるのでは」と期待。横綱昇進に求められることについて、数字は「何勝何敗とか私が今、言えるわけではないですし、その基準について申しあげる用意はありません」としながらも、「相撲自体もいい相撲であってほしい。ただ勝てば良いというものではない。目の肥えたファンの皆さんがうなるような相撲を見せていただきたい」と求めた。12勝3敗での優勝ということもあり「(名古屋場所では)15日間の相撲を見て、みんながどう思うかどうか。同じ1勝でも価値ある1勝と、まぐれの1勝があるでしょう。勝ち星を重ねていけば、道は開けるんじゃないでしょうかね」とも話した。

場所中に、場所前の不要不急の外出が発覚し途中休場した大関朝乃山(27=高砂)については「正直申しあげて失望した。日頃、部屋の師匠がどんな指導をしているのかということについて、もちろん疑問は残るが、何と言っても協会の看板力士。次の横綱に一番近い大関という地位にある力士として、あまりにも軽率で自覚が足りないと思い、本当に残念。協会でコンプライアンス委員会を開き調査中ということを八角理事長から聞きましたが、どうしてそうゆう状態になったのか、しっかり調査して対処の仕方を公正に行っていただきたいと思います」と話した。さらに「地位が上がるほど責任と義務は重くなるというのは、何も相撲界に限ったことでなく、どこの世界でも同じこと。決して大相撲の世界だけが何か世間と違うことをやって許されるということは、あり得ない」と断じた。一方で「心を入れ替えてやり直してほしい。素晴らしい素質を持っている力士だとみんなが思っている。やはり心の問題。今回のことが本当に反省材料になれば、次の道も開けるんじゃないでしょうか」とも話した。

休場した横綱白鵬(36=宮城野)については、既に決議した「注意」が継続している。名古屋場所で進退がかかるが「本当に7月場所で進退を懸けるという本人が言っている言葉を、私は理事長から聞きました。それを信用して、もう1回チャンスを与えようということに、3月の横審で皆さんで決めました。そういう期待を持っているので、ぜひ出場して頑張ってほしい。横綱ですから、本当の意味で壁になってほしい。そこを期待しています。ケガを治して出場して、活躍してほしい」と期待した。