天国の兄弟子に吉報を届けた。日本相撲協会審判部は29日、東京・両国国技館で大相撲九州場所(11月14日初日、福岡国際センター)の番付編成会議を開き、寺沢改め朝乃若(26=高砂)と平戸海(21=境川)の新十両昇進を決めた。平戸海は長崎県平戸市出身で、中学を卒業して16年春場所が初土俵。所要5年で関取の座を射止め「一つ目の夢だったので、かなって良かった。順調に上がってこれたと思う」と喜んだ。

今年4月に境川部屋所属の三段目力士、響龍の天野光稀さんが急性呼吸不全のため、28歳の若さで亡くなった。会見に同席した師匠の境川親方(元小結両国)は「メールを響龍が病床から送ってきてくれた。そのためにも頑張ろうという気持ちも強かったと思う。今年はつらい年だったので、平戸海が(新十両昇進で)少し払拭(ふっしょく)してくれた」と感謝する。体調不良の中で響龍さんは、病院から看護師を通じて部屋の力士にメールを送ってきてくれたという。

平戸海が病床の響龍さんに「一緒に頑張りましょう」とメッセージアプリ「LINE」で送ると「お前が(関取に)上がったら元気出るわ」と返事がきた。今場所の7番相撲で5勝目を挙げ、新十両昇進を確実にした秋場所13日目の24日、響龍さんに「おかげさまで上がりました」とLINEを送った。「喜んでくれていると思う」。

新十両まで押し上げたのは、自他共に認める稽古量。猛稽古で知られる境川部屋の中でも、平戸海は「稽古量で一番やってきた自信がある」と胸を張る。境川親方も「ブレないで相撲に打ち込む、今どきの若い人間にこういう子がいるのかと。入門当初から関取衆、親方衆は、やる気を買っていた。こいつを強くして上にあげようと思っていた」と明かした。

ご当所の九州場所を新十両として迎える。平戸海は「新十両で九州を沸かせられるように頑張りたい」と意気込む。目標の力士は部屋付きの武隈親方(元大関豪栄道)。「同じ相撲で、形を磨きたい。左前みつで、右を差して一気に出たい」と誓った。【佐藤礼征】