苦労人の芝あらため紫雷(しでん、29=木瀬)が新十両昇進を果たした。

日本相撲協会は1日、来年初場所(1月9日初日、東京・両国国技館)の番付編成会議を開き、九州場所は西幕下2枚目で5勝2敗の好成績だった紫雷の新十両昇進を決めた。日大相撲部出身で前相撲からスタート。すぐに幕下までは駆け上がりながら、そこから7年、42場所も幕下にとどまった。

「ほんと長かったですし、まあ上がったなという感じですね。すごいうれしいかなと思っていたが、実感がない感じですね」は心からの本音だった。「7年ですかね。毎年、後輩が入ってきては活躍していって、すごいなと思っていた。本当に悔しかった」と振り返る。

幕下に上がってから、大きな壁に苦しんだ。「あきらめが悪いというか、しがみついているだけだったんですけど。なんで続けられたか分からない。いつか上がれる。結果がついてきてよかった」。

転機に昨年7月場所前の眼窩(がんか)底骨折の重傷を挙げた。「正直、年齢もいっていたし、手術をしなければいけない。そこで幕下の下に落ちて、英乃海関に『付け人ついてくれ』と。自分は幕内に戻るから、おまえは関取になれと。自分は深く考える方じゃない。勢い任せというか、意地というか。このままでは終わりたくないという思いでした」と振り返る。

関取の座をつかむチャンスで迎えた九州場所。「最初に負けてリズム狂ったな思って。踏み込みも甘くなるかと考えた。でも体が動いたし、相手を研究して場所に臨むようになった。それも生きたかなと思う。20代最後、結果を出したかった」。今月24日に30歳の誕生日を迎える。今までの苦労が報われた。ただ、本当の勝負はここから始まる。