初場所限りで部屋を閉鎖する尾車親方(元大関琴風)が千秋楽の23日、代表取材に応じ、35年間の師匠人生を終えることについて「寂しいというよりホッとしている。やり切ったという気持ち」と心境を語った。

4月26日に65歳の誕生日を迎え、日本相撲協会の定年を迎える同親方は、春場所の宿舎が使えなくなるなどの事情で1場所早く部屋を閉鎖することになった。

今場所は弟子の矢後(27)が、十両の優勝争いに参戦。11勝4敗の好成績を残し、「尾車部屋」の力士として最後となる場所で気を吐いた。決定戦で琴勝峰に敗れて優勝を逃したものの、同親方は「いい夢を見させてくれてありがとうと言いたい」と感謝した。

30歳で尾車部屋を興し、嘉風(元関脇、現中村親方)や豪風(元関脇、現押尾川親方)らを輩出した。一番の思い出は、2人が優勝争いに絡んだ場所で「時間のない中、(優勝用の)タイとかを用意しましたよ。すごく忙しかったですけど、今思えば幸せな瞬間でもありました。多くの弟子、ユニークな弟子に恵まれて幸せな親方生活でした」と懐かしがった。

東京・清澄白河には尾車部屋の他に、同じ二所ノ関一門の大嶽部屋、錣山部屋、高田川部屋がある。自身と同じ大関を育てられなかっただけに「阿炎(錣山)や王鵬(大嶽)、竜電や輝(ともに高田川)が私の夢をかなえてくれることを期待しています」。さらに「それと誰かが尾車部屋を再興してくれることを願っています。私は清澄白河が両国に続く、『相撲の町』だと思っていましたが、最近は『コーヒーの町』になってしまっている。いつしか再び『第2の両国』になってくれることを願っています」と、清澄白河にある相撲部屋の活性化を願った。