新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、20年3月の大相撲春場所前を最後に禁止されていた、力士による出稽古が6日、2年3カ月ぶりに解禁され早速、幕内の高安(32=田子ノ浦)が追手風部屋への出稽古に足を運んだ。

16人の力士が所属する田子ノ浦部屋だが、関取は高安1人だけ。これ以上の稽古相手はいないと言われた、兄弟子だった横綱稀勢の里(現二所ノ関親方)引退後も、しばらくは胸を借りていたが、ルーティンともいえた出稽古はコロナ禍で出来ず、さらに二所ノ関親方の昨夏の独立後は胸を借りることも出来ず、部屋で幕下以下の若い衆を稽古相手にする日々が続いていた。

部屋での稽古に工夫を凝らすものの、物足りなさがあった高安にとって、待ちに待った出稽古の解禁。東京・江戸川区の部屋から埼玉・草加市の追手風部屋に出向いた高安は、朝8時半に稽古場に下りた。四股など基礎運動で汗をかいた後、土俵に入り追手風部屋の関取衆と申し合い。小結大栄翔、幕内の翔猿、十両の大奄美、大翔鵬とタイプの異なる力士相手に18番取って11勝7敗。最後は大栄翔と連続9番の三番稽古で締めくくった。

追手風部屋への出稽古は大関時代以来。「懐かしいですね、本当に。やっぱり関取衆との稽古はいいな、という充実感」と久々の出稽古に満足そうな第一声だった。「気が引き締まりますし、いろいろな個性がある力士が(いて)、いい勉強になりますので、本当にみなさんの配慮に感謝したいです」と実感を込めた。

待ち望んでいた出稽古。「心待ちにしていましたし、本当に今日は浮き浮きしたような気持ちで稽古が出来ました」と感激の言葉は続く。優勝経験もある突き押しの強烈な大栄翔との手合わせも「部屋でやるより何倍もいい稽古が出来ますし、本当にありがたい」と有意義だった。出稽古解禁は22日までの17日間だが「ここから徐々にペースを上げていって、いろいろな部屋に行って精力的にやりたいです」と、この期間を無駄にはしない。

3月の春場所は優勝した関脇若隆景と優勝決定戦を争い、5月の夏場所は三役目前の東前頭筆頭に番付を上げた。15場所在位した大関へ復帰の足がかりにしたいところだったが、夏場所は6勝9敗と負け越し。「自分の調整ミス。場所前の稽古が足りなかった。修行が足りない、稽古が足りないということですから」と反省を素直に受け入れつつ「(それを)受け止めて名古屋場所では悔いを残したくないので、精いっぱいつとめたいですね。千秋楽まで優勝争いに絡む、場所を盛り上げて素晴らしい場所にしたい、ただそれだけです」と前を向いた。

積極的に出稽古を活用する高安だが「メリハリをつけたいと思う。休む時は休んで、やる時はしっかりやって自分の体と相談しながら、体調がいいときはたくさんやりたいですし。本場所15日間で力が出ることが一番いいので、いいコンディションで初日を迎えたい。そこを目標に置きたい」とスタミナも考慮しながらこなすつもりだ。

稽古終了後には大栄翔とストレッチする姿もあった。「『助けてください』と言われたので。まあ、ちょっと相談されて、ちょっとコツを教えてあげただけですけど」と出稽古ならではの交流も味わった。前日、部屋開きに足を運んだ二所ノ関部屋にも「二所ノ関親方に胸を出してもらっていただけるのであれば行きたいと思います」と“元弟弟子”としての出稽古に意欲的だった。

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