西前頭2枚目の逸ノ城(29=湊)が、横綱照ノ富士から金星をあげ、ただ1人勝ちっぱなしの5連勝を飾った。立ち合いに素早く左上手を引き、もろ差しになって攻め続けて最後は寄り切った。金星は19年名古屋場所以来で歴代10位の通算9個目。新入幕で13勝2敗と優勝争いを演じた大器が、苦難をへて覚醒の時を迎えた。かど番の大関正代、御嶽海はともに黒星を喫した。
◇ ◇ ◇
幕内最重量211キロの圧力で横綱を寄り立てた。立ち合いから攻めた逸ノ城はもろ差しになるが、照ノ富士に両肘をきめられかけた。そのピンチも前に出て、攻めて脱出。寄り切った通算9個目の金星に「よかったです。立ち合いからまわしを取れたので落ち着いて出ようと思った」とぜいぜい荒い息をはき出した。
「怪物」の呼び名も「かつて」になりかけていた。幕下15枚目格付け出しデビューから、所要4場所で入幕を果たした。その新入幕場所、14年秋場所で優勝争いに絡む13勝2敗の大暴れ。翌場所は史上最速で三役(関脇)昇進を果たした。
恵まれた体を生かした重厚な相撲が持ち味。しかし、増量していく巨体が重くのしかかっていく。19年秋場所で右肩を脱臼し、その後に腰椎椎間板ヘルニアを患い、十両まで落ちた。すぐに大関、横綱と大きな期待をかけられたエリート街道から一転、苦難を味わって今場所がある。
「(5連勝は)悪くないと思う。1日一番に集中していきたい」。照ノ富士は過去2勝13敗と苦手にしていた。鳥取城北高への相撲留学でモンゴルから同じ飛行機で来日し、高校の寮も同じ部屋だった。そんな「盟友」が今や横綱を張る。その照ノ富士からの金星に「(感慨は)特にないです」と言うが、戦った肌ではしっかり感じ取っていた。
だれが主役の座をつかむか、まるで分からない大混戦の名古屋場所。実績十分の逸ノ城にその権利は十分にある。「まだ始まったばかりですから。自分の相撲に集中したい」。照ノ富士からの初金星が、残り10日間に向けて後押しする。【実藤健一】

