元横綱2代目若乃花の下山勝則氏が、死去したことが18日、分かった。69歳だった。関係者によると、肺がんを患い16日夕方に亡くなったという。

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下山さんを初めて取材したのは、引退した83年の初場所前だった。稽古場、支度部屋でも、笑みはなく、口数も少なかった。進退はもちろん、再婚、病気、引退後の年寄名跡、独立…。悩みも多かった。2勝3敗となると引退。発表の翌日早朝に自宅マンションを直撃取材した。ドアが開くと、晴れやかな笑みを見せた。その傍らにいた侑子夫人も笑顔で応対してくれた。

現役時は口は重かったと聞いたが、引退後はマスコミと積極的に交流。有望新弟子入門のニュースを教えてくれたこともあった。誕生日会にクリスマス会。年賀状、暑中見舞い、番付も欠かさず送られてきた。細かな心遣いは、7歳年上で銀座のクラブのママだった、おかみさんのなせるわざだった。

若三杉時代から芸者に入れ込まれるなど、色白の美男で見栄えもいい。力ずくでなく柔軟な相撲は、玄人にも評価され、華があった。夜汽車で上京して入門から波乱の人生。おかみさんがもっと長生きしていれば、親方の晩年も明るかったはず。天国でもおふたりで仲良くやってください。【河合香】