大相撲の横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、9度目の優勝を目指す名古屋場所(9日初日、ドルフィンズアリーナ)に向けて、調整のペースを上げた。3日、名古屋市の佐渡ケ嶽部屋に、今場所前としては初の出稽古を実施。同じく出稽古に来た新入幕の豪ノ山(25=武隈)と三番稽古を行い、計12番で9勝3敗と圧倒した。

敗れた3番も、相手得意の突き、押しを受ける、胸を出す格好の立ち合いだった。土俵際で残しきれないほどの、豪ノ山の鋭い立ち合いには「おー! つえーっ!」と、笑顔を伴って称賛する場面もあった。また、相撲を取りながら、動きの止まった豪ノ山に向けて「そこで終わっちゃダメだろ。力を抜くな」などと助言。先場所十両優勝の新鋭に、同じく先場所幕内優勝の番付最高位が、稽古をつける形となった。

稽古を見守った相撲解説者の舞の海秀平氏(55)は「正直、もっといろんな相手とやっているところを見ないと計れない部分はありますが、悪くはないと思います。当たりの強い豪ノ山の立ち合いを問題なく受け止めていましたし。先場所の時と同じような状態に感じます」と、現時点ですでに、優勝した先場所に近い仕上がりになっていると分析した。

三番稽古の直後には、ぶつかり稽古で豪ノ山に胸を出した。倒れ込んだ豪ノ山に「ダメだ!」や「甘すぎるだろ!」などと、奮起を促す言葉を懸けたのも期待の裏返し。同行した師匠の武隈親方(元大関豪栄道)からも感謝されていた。

1日に部屋での稽古中にぎっくり腰になったが、前日2日には同部屋の関取衆と10番相撲を取った。さらにこの日は出稽古。関係者によると、この日、出稽古することは前夜になって決めたという。腰痛の影響は少ないとの判断に至ったとみられ、状態上向きを印象づけた。稽古後は充実感に満ちた表情を見せたが、報道陣の取材には応じずに引き揚げた。