大相撲初場所で優勝同点の13勝を挙げた琴ノ若(26=佐渡ケ嶽)が、満場一致で大関に昇進した。日本相撲協会は1月31日、東京・両国国技館で大相撲春場所(3月10日初日、エディオンアリーナ大阪)の番付編成会議と臨時理事会を行い、承認した。千葉・松戸市の部屋で行われた昇進伝達式には、父で師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)と並んで臨んで口上。「感謝の気持ちを持って」と祖父で元横綱琴桜の先代師匠の言葉と、母校埼玉栄中、高相撲部の部訓を込めた。大関琴ノ若として1場所土俵に立ち、その後、50年ぶり「琴桜」復活となる改名の意向を示した。

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2人の使者を、琴ノ若は両親と一緒に迎えた。かつての若乃花、貴乃花ら長い相撲の歴史の中でも数えるほどしかない、親子が並んで昇進伝達式に臨むシチュエーション。高まる注目度と緊張感の中で、はっきりと口上を述べた。「謹んでお受け致します。大関の名に恥じぬよう、感謝の気持ちを持って、相撲道に精進してまいります」。飾らない言葉で、看板力士となって最初の大仕事をこなした。

「感謝の気持ちを持って」に、思いを込めた。「感謝」は、幼少期から祖父に大切にするよう言われた言葉。同時に母校の埼玉栄中、高相撲部の部訓「感謝の気持ちと思いやり」にも通じる。「思ったことを素直に言おうと思った。この(感謝の)気持ちが一番大事」。サラブレッドとして育ったが、常に謙虚で若い衆にも優しく接する人柄がにじみ出た。

注目のしこ名は、来場所だけ「琴ノ若」として土俵に立ち、5月の夏場所から「琴桜」に改名することに決めた。「この名前を大関に上げたかった。まず1場所、しっかりと取って、そこから琴桜を継がせていただく」。父への恩返し。そして小学4年時の「(琴桜への改名は)大関に上がったらいいぞ」という生前の祖父との約束を同時に果たす道を見つけ、決めた。

かねて「琴ノ若で優勝」を目標に掲げていた。初場所は、わずかに届かなかったが「大関琴ノ若」として土俵に立つ最初の春場所は、そのラストチャンスでもある。かなえれば琴桜として臨む最初の夏場所は綱とり場所。夢はふくらむばかりだ。「先代に追いつけるようにやっていく」。伝達式後、親子で祖父の眠る松戸市の墓前を訪れた。50年ぶりに復活する「琴桜」として、横綱を目指す決意を報告した。【高田文太】

 

○…昇進伝達式に出席した佐渡ケ嶽部屋後援会の二藤部洋会長(74)は、すでに「琴桜」の化粧まわしを、発注していることを明かした。同会長は師匠の故郷、山形県で事業を展開しているだけに、2月中に山形県内で祝賀会を実施予定。さらに「雪でどうなるか分からないけど、パレードもやりたい」と、天候次第で2月中に、山形県民に勇姿を見てもらいたい考えだ。

 

〈琴ノ若の大関昇進〉

◆佐渡ケ嶽部屋 部屋としては11年秋場所後の琴奨菊以来、13年ぶり7人目の大関誕生となった。現師匠になってから4人目の大関だが、新弟子から育てた大関は初。7人のうち横綱まで昇進は琴桜のみ。その琴桜の先代師匠から現師匠は「横綱をつくれ」と厳命されている。

◆千葉県出身 琴ノ若は千葉・松戸市出身。県出身者としては55年秋場所後昇進の松登以来、69年ぶり。

◆親子で伝達式 ともに最高位大関、しこ名が増位山の親子。元大関貴ノ花が育てた、ともに最高位横綱の若乃花と貴乃花。父が関脇、子が大関の、ともにしこ名栃東の親子。この4人(3家族)が過去にいる。