14日目を終えて12勝2敗で単独トップを守りながら、前日に右足首を痛めて救急搬送されていた新入幕の東前頭17枚目・尊富士(24=伊勢ケ浜)が、大相撲の歴史を動かした。痛みに耐えて、豪ノ山(武隈)を押し倒しで破った。1914年(大3)5月場所の両国(元関脇)以来110年ぶりとなる新入幕優勝を果たした。その両国の11場所を上回る所要10場所の史上最速Vを決めた。

NHKのテレビ解説を務めた師匠の伊勢ケ浜親方(63=元横綱)は、ケガの状態について「靱帯(じんたい)が伸びていますからね。本来は相撲はとれないですよ」と明かした。その中で出場に背中を押した理由に「でもこれを止めたら、止めた方も後悔しますし、止められた方も後悔しますよね」と感慨深い表情を見せた。

優勝決定時には「うれしいですね。よく攻めましたね。気持ちが強いですね」と偉業を遂げた弟子をたたえた。相撲内容にも「一瞬、前に押していって、押し返されたんですけれど、自分から攻めたのが良かったですね」と賛辞を送った。

師匠と同じ青森県出身。同県力士の優勝は、1997年(平9)九州場所の大関貴ノ浪以来、約26年半ぶりとなった。

アクシデントを強靱(きょうじん)な心身で乗り越えた。勝てば優勝だった前日の西前頭筆頭朝乃山戦で、右足首付近を負傷。自力で歩行できず、車いすで運ばれ、救急車で大阪市内の病院へ搬送されていた。

◆尊富士弥輝也(たけるふじ・みきや)本名・石岡弥輝也。1999年(平11)4月9日、青森県五所川原市生まれ。鳥取城北高→日大。22年秋場所初土俵、24年初場所新十両で13勝2敗の優勝、今場所新入幕。184センチ、143キロ。得意は突き、押し。

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