東前頭7枚目の隆の勝(30=常盤山)が、6連勝で7勝1敗とし、勝ち越しに王手をかけた。立ち合い頭で当たると、すかさず右を伸ばして前頭美ノ海の体勢を崩した。さらに前まわしを取りにきていた相手を、上から押しつぶすようにして、前のめりに手をつかせた。決まり手こそはたき込みだが、一方的に攻め勝った。
この取り口に、NHK総合テレビの生中継で、解説を務めていた常盤山部屋付きの湊川親方(元大関貴景勝)が「隆の勝関の右がすばらしかった」と絶賛した。同親方によると、隆の勝の右からの突き、押しの威力は絶大で、相手に力を伝えるのにたけているという。この解説を取組後の支度部屋で報道陣から伝え聞いた隆の勝は「湊川親方には『右を伸ばしたらいい相撲を取れる』と言ってもらっています。稽古場でアドバイスをもらうことは、ほとんどないけど、迷っているのを感じ取ってアドバイスしてくれます」と“ここぞ”の助言が心に響き、背中を押してくれると感謝した。
「お互いに現役だった時から、いろいろと聞いていたので、それを思い出しながら今もやっています」。最近は直接、湊川親方から隆の勝にアドバイスを送ることは減ったという。それでも「あれだけ必死にやってきた人の言葉だから伝わるし、引き締まる」という。最近、同親方が声を掛けるのは、若い衆が多いというが、その言葉は、自分にも当てはまると思って耳を傾けている。今場所前には「8月に頑張らないやつは勝てない」という言葉を耳にした。真夏の稽古が苦しい時期。自身は主に夏巡業で全国を回っていた期間だが、地道に基礎などで体づくりを怠らず「体重を落とさないようにした」という。湊川親方の言葉は、魔法のように隆の勝の奮起を促し、事実、背中を押してくれた。
優勝争いの経験は少なくない。昨年名古屋場所では、当時の横綱照ノ富士(現伊勢ケ浜親方)と優勝決定戦に臨み、初優勝目前に迫ったこともある。この日の取組後に「まだ中日ですか。長いですね」と漏らした。一般的には、勝っている時の方が時間の流れが早く感じると思われがち。ただ隆の勝は「連敗している時の方が、時間がたつのは早いんですよ」と明かした。これまでの、どの場所よりも長く感じる初優勝の場所へ-。盟友でもある湊川親方を、事実上、とすることができる今回の優勝争いは、これまでと一味違う。そんな雰囲気を感じている様子だった。【高田文太】

