「にしたんクリニック」「イモトのWiFi」で知られるエクスコムグローバルの西村誠司社長(56)が、日刊スポーツの大相撲担当・佐々木一郎記者と対談しました。「すもうにもうす」と題し、3回連載します。第1回は、秋場所の振り返りです。西村社長が支援する藤島部屋の藤凌駕、藤青雲への思いも語りました。
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佐々木 秋場所は横綱大の里が6場所ぶり6度目の優勝を果たしました。表彰式で君が代を歌いながら涙を流したシーンは印象的でした。
西村 僕も泣きました。相当苦しかったんだなということが伝わってきました。現場で感動したのもありますし、家に帰ってからNHKの録画を見直して、本人の顔がアップになった場面では本当に良かったなと思いました。スピード昇進で優勝し、横綱になりましたが、振り返ればこの1年の経験は良かったのではないでしょうか。
佐々木 もちろん素質があった上で、努力もして横綱になりましたが、それほど苦難がないまま横綱に昇進するという珍しいケースでしたからね。我々にはなかなか分かりにくいのは、横綱という立場としての苦しさですよね。7月の名古屋場所は9勝6敗でしたが、横綱が15日間皆勤して9勝というのは、恥ずかしいことだったようです。
西村 黒星が続いた次の日の取組で土俵に上がるの苦しいと思いますよ。あの苦しさは横綱しかわからないんじゃないかな。
佐々木 もう1人の横綱、豊昇龍は今、相当苦しいと思われます。
西村 苦しいですよ。横綱になって10場所連続で優勝してない。僕は応援しています。
佐々木 相撲ファンは比較的、温かい目で見ているような気もします。横綱審議委員会もそんなに厳しいことは言っていないんですが、本人と師匠の立浪親方(元小結旭富士)からは、追い込まれているような雰囲気が伝わってくる時があります。
西村 大丈夫かなって、ちょっと心配なんですけどね。大の里がああいう結果になったんで、豊昇龍も踏ん張って優勝してくれたらいいなと思います。現実的な優勝予想は大の里か安青錦だと思うんですよね。でも相撲ファンとしては、豊昇龍がこんな状況で優勝してくれたら、九州の言葉で言うと「バリ盛り上がる」じゃないですか。
佐々木 西村社長はかねて安青錦の精神力を絶賛されています。2場所連続優勝とはなりませんでしたが、ケガを抱えながらも千秋楽まで優勝の可能性を残しました。
西村 横綱には確実になってくれるんじゃないですか。今場所じゃなくても、着実に結果を積み上げて綱とりを狙えばいいんじゃないかなという気はします。侍のような精神で大相撲を体現している力士ですごい好きですし、九州場所も優勝争いには絡んでくるんじゃないですか。
佐々木 ケガは少しずつ良くなってますからね。完治したらものすごく強くなると思います。
西村 もう間違いないですよね。
佐々木 先場所の話題で言うと、藤ノ川が新関脇で11勝を挙げました。協会内でも驚く親方が多かった印象です。
西村 まだ若いですしね。義ノ富士や藤ノ川など20代前半の力士が元気に頑張ってくれると盛り上がるんじゃないですかね。ああいう力士を見ていると、藤島部屋の(元十両の)藤天晴もここからじゃないですか。体が小さいっていうのは言い訳にはできないかな。その手本になっていていいなと。
佐々木 その藤島部屋の関取2人は大健闘でした。藤凌駕は8勝7敗で勝ち越し、藤青雲は9勝6敗でした。
西村 (藤凌駕は)惜しい取組が2番ぐらいあったんで、本当は10勝5敗までいってほしかった。でも2人とも春場所が新入幕だったことを考えれば、すごいことです。秋場所の千秋楽パーティーで、藤凌駕関があんなニコニコで上機嫌で、やりきった感がある表情をしていました。こういう顔は見たことがなかったんですよ。
佐々木 そうだったんですか。
西村 それがすごく印象的でした。やっぱり上位総当たりの4枚目で勝ち越したことで、自信がついたのかもしれません。大の里戦は一瞬、藤凌駕関が勝ったんじゃないかと慌てちゃった。立ち合いは五分というか、負けていなかった。あの一番も手応えを感じられたんじゃないかな。
佐々木 決して一方的な負けではなかったですからね。九州場所の番付発表では藤凌駕が西前頭筆頭、藤青雲は西前頭2枚目、どちらも自己最高位を更新しました。上がり幅を考えると番付運も良かったですね。
西村 予想では藤凌駕関が西の筆頭で、藤青雲関が東の4枚目ぐらいかなと思っていたんですよね。
佐々木 西村社長は藤島部屋の千秋楽パーティーに行かれて、関取2人とお話しすることはあったんですか。
西村 話しました。僕は藤凌駕関に熱海富士関とやった時に立ち合い押し込めた部分はあるけど、そこで一息ついた時に2度目のエンジンがなかったんで、まだ稽古積んで、そこでさらにもう押し込めたらいいなって言って。本人も同じ考え方でした。若いですし、さらに馬力がつくんじゃないですか。
佐々木 藤青雲はいかがでしたか。
西村 彼は謙虚に、まだまだとにかくいい相撲取ってきますっていう感じだったんですよ。昨日(の番付発表後に)、藤凌駕関に「筆頭おめでとう」とLINEを送りました。「前に出る相撲で九州場所頑張って」って送ったら、「押し相撲で、一気に持ってけるような、そういう相撲やります」と、いい言葉が返ってきました。
佐々木 次は2人とも上位総当たりになりますので楽しみですね。もちろん金星のチャンスもあるでしょうし、2人とも勝ち越せば新三役の可能性があります。
西村 楽しみでしかないですよ。ご当地の義ノ富士関も小結に復帰しました。こちらも期待しています。
佐々木 ちょっと話を戻しますが…、秋場所は霧島の横綱昇進が、熱海富士は大関昇進がかかっていたんですけれども…。
西村 霧島はどうしたんでしょうか。
佐々木 負けが込んでくると、ちょっと考えてしまったようです。
西村 何度考えてもまだ分からないし、それが相撲の難しさですかね。誰よりも稽古するじゃないですか。稽古も十分だし、当然経験、技術もあって、だから難しいですね、相撲ってね。あれは意外でした。だから僕もわからないですね。
佐々木 綱とりには、独特の重圧があります。霧島の場合、3月の春場所で優勝した時から5月、7月とずっと綱とりがかかっていて、半年間ずっと緊張がある中でやり続けることの大変さがあったと思います。
西村 難しいですね。熱海富士は自力がまだ足りないということではないでしょうか。
佐々木 最後はまさかの5連敗だったので、ちょっとびっくりしました。
西村 逆に義ノ富士関は初日から5連敗でしたが、あそこまで勝ち星を伸ばせたことはすごい印象的でした。序盤は心配しましたが、自力があるなと感じました。再三役で、九州場所も期待できるんじゃないですか。
佐々木 あれだけ負けが込んで挽回(ばんかい)できるのは、メンタルが強いと思います。義ノ富士は話を聞いていてもさっぱりしています。悩まないというか、そう見せないというか。
西村 あとは美ノ海関も好きだったんですけど、やっぱり相撲がうまいですね。33歳ですが、ようやく三役ですね。
佐々木 学生相撲出身力士としては最も遅い三役昇進なので、ある意味で美ノ海らしいのかもしれないですね。
西村 玄人好みの相撲を取りますね。うまいですね。
(つづく)
◆西村誠司(にしむら・せいじ)1970年(昭45)5月20日、愛知県生まれ。生活保護を受ける家庭に育ち、中学から新聞配達。名古屋市立大経済学部卒業後、93年アクセンチュア入社。95年に起業。モバイル通信サービス「イモトのWiFi」、メディカル支援サービス「にしたんクリニック」「にしたんARTクリニック」など、さまざまな事業を展開している。現在の年商は333億円にまで成長。TikTokフォロワー数8・3万。

