ミレニアムの幕開けにわいた00年から20年が経過した。社会の何が変わり、何が失われたのだろうか。

スマートフォンやSNSの普及で、情報の量や速度が格段に進化した半面、容赦ない書き込みや悪意のフェイクニュースの氾らんでおおらかさが失われてしまった気がする。災害やテロの脅威に変わりがあるわけではないが、いざそれが起きた後の復興を信じる思いは、真偽の定かではない情報の多さにむしろそがれてしまったのではないだろうか。

「ポップスター」(4月3日公開)は、00年からの17年間をブランクに、その前を第1部、その後を第2部として描き、この間の変化を浮き彫りにする。

時代の象徴として登場するポップスター、セレステを演じるのは38歳になったナタリー・ポートマンだ。薄幸の少女として「レオン」に登場したのは13歳の時。5年後には「スター・ウォーズ エピソード1」で美しい姫に。そして29歳の「ブラック・スワン」の屈折…時を置いてまったく違う顔を見せ、その度に強烈な印象を残す。今作もそんな彼女の節目の1本だ。

00年、14歳のセレステは同級生による銃乱射事件に巻き込まれ、生死の境をさまよった後に意識が戻る。姉のエリーと作った犠牲者への追悼曲が国民的ヒット曲となり、期せずしてスターへの階段を上り始める。

第1部ではセレステの少女時代、第2部ではその娘を演じるのがラフィー・キャシディ。「シークレット・オブ・モンスター」(15年)で一躍注目されたブラディ・コーベット監督は「超然とした少女」のイメージで彼女を選んだという。

「奇跡」を起こす1部のイメージにはピッタリだし、成人後を演じるポートマンとは微妙に似ていなくて、その違和感がむしろ彼女の「変化」を印象付ける。

第2部のセレステは人気の頂点を過ぎ、スキャンダルまみれでアルコールに溺れている。復活を懸けて集大成的なツアーを企画するが、彼女がヒット曲のMVで使用したマスクを着用した集団による銃乱射テロが起きて…。

むごたらしいテロの後にもほのかな明かりが見えた1部に対し、2部は惨劇の後、さらに不気味さが尾を引く。これが17年をまたいだ違いなのだろうか。

ポップスターのどうしようもないわがままと魅力。ポートマンの演技はリアルだ。姉役のステイシー・マーティンは「自由に見える演技の中で間の取り方が絶妙。正確無比だった」と振り返る。運命的にスターとなった天才少女の「17年後のどうしようもない虚無感」が伝わってくる。

「ブラック・スワン」でダンスシーンの振り付けをした夫のバンジャマン・ミルピエが今回もラストシーンのステージを担当。危うさを秘めながらポートマンのダンスはキレキレだ。

「レオン」以来、さまざまな顔を見せながら、彼女の役柄には常に「危うさ」がつきまとい、それが魅力になっている。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)