高級紳士服店が軒を並べるロンドン・サヴィル・ロウ通りにある老舗店「キングスマン」は、実はどの国にも属さない諜報(ちょうほう)機関の拠点で…。

15年公開の第1作は、ブリティッシュ・スーツを着こなす「王道スパイ」の活躍を描き、17年の第2作では米国の同盟組織との共闘で活躍の場を広げた。次はどこへ。第3作「-ファースト・エージェント」(24日公開)は時間を巻き戻し、第1次世界大戦を舞台に組織の誕生秘話を描いている。

20世紀の初めの頃。名門貴族オックスフォード公(レイフ・ファインズ)は独自の情報網で欧州の不穏な動きを探り、紛争勃発を未然に防ごうと尽力していた。一方で、国際的な闇の組織は強大な力をつけており…。

この闇組織のメンバーに怪僧ラスプーチン、マタ・ハリ…といった歴史上の「悪役」が名を連ねているところがミソになっている。かなりのはじけ方で描かれる大戦の「裏側」が虚実混じり合って興味をそそる。

高度な「戦闘術」を身に付けているオックスフォード公に、元アフリカの戦士だった執事(ジャイモン・フンスー)と実は射撃の名手という専属家庭教師(ジェマ・アターソン)のプレ・キングスマン・メンバーが不死身のラスプーチン(リス・エヴァンス)とアクションを繰り広げ、マタ・ハリ(ヴァレリー・ハフナー)のハニー・トラップを打ち砕く。

このアクションだけで見応えがあり、ハニー・トラップの舞台もホワイトハウスで、セットや特撮も隙無く作り込まれている。

最大の見どころは塹壕(ざんごう)戦のリアルな描写だ。地面すれすれを飛び交う弾道の恐怖が生々しく伝わってくる。

オックスフォード公の勇敢な息子コンラッド(ハリス・ディキンソン)が一兵士としてここで活躍。彼の存在が「キングスマン」創設のカギとなる。

シリーズ3作を手掛けるマシュー・ボーン監督の頭の中には世界史とキングスマンの歩みがチャートとしてしっかりと出来上がっているようで、劇中でも大戦に関わる実在の人物たちの関係性が「図解」される。

第1次大戦前後の史実をざっとおさらいしておくと、さらに楽しめると思う。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)