ハリウッドの大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン氏の数々のセクハラ行為が発覚して7カ月。その実態をスクープしたニューヨーク・タイムズ紙の女性記者2人を題材にした映画が制作されることが明らかになりました。映画化の権利を獲得したのは、元婚約者と元妻も被害に遭ったブラッド・ピット。同氏のセクハラの実態そのものではなく、綿密な調査報道でセクハラを暴いていった舞台裏を描く内容になるとのことで、アカデミー賞作品賞に輝いた「スポットライト 世紀のスクープ」(2015年)のような作品になると見られています。

 数々のアカデミー賞受賞作を世に送り出してきたワインスタイン氏は、自らの権力を盾に過去30年以上に渡って女優やモデル、女性スタッフらにセクハラ行為を行ってきたことがニューヨーク・タイムズ紙の記事で発覚。その中にはピットの元妻で女優のアンジェリーナ・ジョリーや元婚約者のグウィネス・パルトロウら大物も含まれており、ハリウッドに大きな衝撃を与えました。ワインスタイン氏が手掛けた「恋におちたシェイクスピア」で99年にアカデミー賞主演女優賞に輝いたパルトロウはその2年前、「Emma エマ」(96年)の主演に抜てきされた際にワインスタイン氏からホテルの部屋に呼び出されたことを告白。体を触られたり、マッサージをするよう求められたと言います。当時交際していたピットにそのことを打ち明け、激怒したピットが「二度とするな! また同じことをしたら、報いを受けるぞ」と同氏の胸ぐらをつかんで脅したと伝えられています。

 一方、ジョリーが被害に遭ったのはピットと交際する以前のことで、「マイ・ハート・マイ・ラブ」(98年)のプロモーション活動中だったと言われています。ピットは直接その事実を知らなかったと思われますが、ジョリーは「若い頃に嫌な経験があり、彼とは絶対に一緒に仕事をしないことにした」とコメントして自らも被害を受けたことを告白しています。

 パルトロウがセクハラ被害に遭ったことを知りながらワインスタイン氏が制作した「イングロリアス・バスターズ」(09年)に出演していたピットには、一連のスキャンダル発覚後に批判の声もありましたが、ワインスタイン氏に直接歯向かった数少ない俳優の一人であることから、どこまで本作の制作に関わっていくのか注目されています。現時点では監督やキャストなど詳細は不明ですが、ハリウッドを騒然とさせたスキャンダルだけに、誰がワインスタイン氏を演じるのかなども気になる所です。

 ワインスタイン氏を巡っては、ケイト・ブランシェットがセクハラ被害を受けていたことを新たに告白するなど、7か月経った現在も騒動が収まる気配はありません。また、ロサンゼルスの検察が3件のセクハラ告発について捜査しており、刑事事件として起訴される可能性もある他、被害者の一人で#MeToo運動のきっかけにもなったアシュレイ・ジャッドから「キャリアをつぶされそうになった」として提訴されるなど複数の女性から民事訴訟も起こされています。そんな一連のスキャンダルが、どのように映画化されるのか関係者たちはその行方を静かに見守っていることでしょう。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)