マドンナの愛娘でモデルや歌手として活躍するローデス・レオンが、今月初めにニューヨークで行われたマークジェイコブスのファッションショーで、開始時間ギリギリに会場に到着したため入場を拒否されて話題になっています。パパラッチに取り囲まれたレオンが、中に入れず戸惑う様子を撮影した動画がネットで拡散され、周囲の野次馬からは「マドンナの娘だぞ」「中に入れてあげろ」と叫び声が上がっているのも確認できます。

予定通りショーを始めるため、招待客には始まる10分前には会場に到着するよう申し伝えがあったといい、遅刻したレオンが入場できなかったのは当然と言えば当然。しかし、スーパースターのマドンナの娘であるが故に、「親の七光り」パワーが発揮できなかったことがニュースになった形です。日本でも二世タレントの「親の七光り」論争は度々聞かれますが、アメリカでは有名な親のコネで成功を収めた二世セレブを「ネポベイビー」と呼び、縁故採用などと批判の的になっています。Nepo baby(ネポベイビー)は、縁故主義のnepotismから生まれた造語で、レオンだけでなく、世間を騒がせているヘンリー王子も立派なネポベイビーです。

生まれながらに恵まれた環境で育ち、苦労することなく親のコネで大きな作品に出演する俳優や、実力が伴わないままデビューするミュージシャンらを皮肉った言葉ですが、中にはその親以上に成功し、名声を掴みとっているネポベイビーもいます。両親より有名になったことで、誰も親の七光りとは呼ばなくなったセレブたちを紹介します。

リアリティー番組の女王として有名になり、実業家としても大成功を収めるキム・カーダシアンもその一人。2000年代に放送された「カーダシアン家のお騒がせセレブライフ」で人気に火が付いたカーダシアン家の長女コートニー、次女キム、三女クロエは、世界で最も有名なセレブ3姉妹としてその地位を確固たるものにしていますが、3人も実はネポベイビーでした。姉妹の父親は90年代に元NFLスター選手だったO・J・シンプソン氏が元妻を殺害して、世界中の注目を集めた事件の弁護を担当した弁護団の一人で、この裁判を通じて父親のみならず一家を取りまとめる女帝の母クリス・ジェンナも有名セレブになりました。しかし、今ではO・J・シンプソン事件を知る若者は少なく、親の七光りはすっかり過去のものとなっています。

ディズニーチャンネルのドラマ「シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ」で主人公を演じて一躍ティーンのアイドルになったマイリー・サイラスは、カントリー歌手ビリー・レイ・サイラスの次女として生まれています。08年にはマイリー・サイラス名義で初アルバムもリリースして歌手としての成功を収め、女優としても「ラスト・ソング」(10年)などの映画にも出演しています。レイは今では自身のヒット曲「Achy Breaky Heart」(92年)よりサイラスの父親という肩書で知られており、娘のサイラスは親を超える大成功を収めた数少ないネポベイビーと言われています。

ジャスティン・ビーバーの妻でモデルのヘイリー・ビーバーは、俳優スティーブン・ボールドウィンの娘で、アレック・ボールドウィンはじめ叔父3人も俳優という芸能一家の元で生まれ育っています。しかし、父の俳優としての知名度は兄のアレックに比べると今一つで、父親のコネなどまったく必要としないほどヘイリーはファッションリーダーとしてその地位を確立しています。

また、人気姉妹モデルのジジとベラ・ハディッドの母親も元スーパーモデルで、テレビドラマにも出演していたヨランダ・ハディッドですが、母親のモデル時代を知る若者は少なく、今では姉妹の活躍を「親の七光り」と呼ぶ人はほとんどいなくなっています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)