橘家文左衛門あらため3代目橘家文蔵(54)の襲名披露興行が21日から上野・鈴本演芸場下席で始まる。先日、襲名披露宴は帝国ホテルで行われ、新文蔵の芸、人柄を愛する人たちが集まった。
司会は人気者の柳家喬太郎。実は浅草演芸場夜の部のトリなのだが、この日は代演を頼んで駆けつけた。最初こそ「仕方なく司会を引き受けた」と笑いを誘ったが、宴の最後には「兄さん(新文蔵)の司会が出来て幸せです」と涙ぐむなど、新文蔵への愛に満ちていた。「笑点」コンビの春風亭昇太、林家たい平も出席したが、「24時間マラソン」を完走したばかりのたい平は体を張った得意の「花火」を披露して沸かせた。
新文蔵は外見こそこわもてだが、心根は優しいから、慕う後輩も多い。締めのあいさつで、師匠の先代から送られた言葉を紹介した。「前座から二つ目、二つ目から真打ちになった時、『位が上がったと思って勘違いするなよ』と言われた。その時は『はい』と軽く答えたけれど、今、その言葉の意味をかみしめています」。披露宴の前に行われた会見でも、新文蔵は「文蔵は寄席にないといけない名前。先代のまねはできないが、妙な責任感もあって、この重圧に耐えていきたい」。
先代は穏やかな人柄で、ネタの数も多かった。名人と言われた三遊亭円生が先代に「竹の水仙」を教わったほどだった。新文蔵によると、入門志願で師匠の自宅を訪れたのは午後10時すぎだった。「ふとんも敷かれていたけど、師匠もおかみさんも嫌な顔をせずに話を聞いてくれた。先代に近づくために勉強していきたい。このままじゃ、先代の位牌(いはい)にすまない」。そして、出席したおかみさんに語りかけた。「1つお願いがあります。どうか長生きしてください」。温かい宴だった。【林尚之】




