草笛光子(85)に会うと、いつも、その若々しさに驚く。

容姿だけでなく、銀色の髪もすてきで、気持ちも若い。

TOKIO松岡昌宏(41)との二人芝居「新・6週間のダンスレッスン」が今月29日から東京・よみうり大手町ホールで上演される。06年の初演以来、通算194回も上演した草笛のライフワーク舞台だが、今回、演出を一新する。従来のものにこだわらず、新しいことに挑戦する草笛の心意気が頼もしい。

演出の鈴木勝秀が言う。「草笛さんが新たな形での上演を提案。よりエンターテインメント性の高い作品にしたいという気合に押され、お引き受けした。音楽は生演奏、衣装と美術も一新。新たな切り口で現代に通用する作品に仕上げたい」。初演以来、1人暮らしの主人公リリーを演じる草笛も「前からの残像を払拭(ふっしょく)して、新しく生まれ変わりたい。あと何年、女優生活ができるのか分からないですが、死んでもいいから、頑張っちゃおう! という気持ちです」と意気込んでいる。

リリーにダンスを教える青年マイケル役に松岡が決まったのも、草笛のラブコールがきっかけだった。5年前、三谷幸喜演出の舞台「ロスト・イン・ヨンカーズ」で共演した際、松岡は草笛の息子役を演じた。草笛は「あっ、ここにマイケルがいたと思った」という。その後、「6週間」が上演した時、松岡に見に来るように誘った。観劇後、草笛の楽屋を訪れた松岡は「おれに見せた意味が分かった。おれにやれという意味だろう?」と言ったという。食事デートを重ねた後、草笛が「本当にできるの」と聞いた時、松岡は「やります」と即答し、共演が決まった。

これまでマイケルは太川陽介らが演じているが、松岡は「今までのマイケルを忘れさせて、おれ色に染めてみせます」。5年前の共演以来、メールも頻繁に交換するほどの仲良しになったが、草笛は「私のこと、『ママ』と呼ぶので困るんです。これからは『リリー』呼んでね。けんかするところは情け容赦なくやりましょう」。劇中ではタンゴ、ワルツなど6種類のダンスを披露する。草笛は「好きなのはワルツ。曲線を描く体の動きは、やさしいように見えて難しいのよ」と言えば、松岡は「ダンス自体、25年踊っていない。ジャニーズJr.以来になる」。ダンスも草笛がリードする。

劇中、リリーとマイケルは最初はけんかばかりしているが、草笛は「あれはけんかによって活力が出ているのよね。いくつになっても刺激は必要」という。舞台終盤、マイケルはリリーに語りかける。「僕にとってあなたは、特別な人でした」と。草笛は「この台詞を聞くたびに、自分が芝居をやっているのではなく、まさに自分自身の人生を生きているような気がして、毎回、心からの涙があふれてくるの」。65年を超える女優人生の集大成の舞台となる。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)