落語家の三遊亭多歌介(さんゆうてい・たかすけ)さんが8月27日に新型コロナ感染症のため亡くなった。54歳の若さだった。

鈴々舎馬風、五街道雲助をはじめ感染した落語家は何人もいたけれど、亡くなったのは初めてだった。

関係者によると、亡くなる10日前の17日に上野・鈴本演芸場で出演していたが、その後、発熱したという。奥さんと一緒に検査を受けたところ、2人ともに陽性と判明した。当時は症状も軽かったため、自宅療養をしていた。しかし、多歌介さんの熱が下がらないため、保健所に入院かホテルでの療養を希望したものの、医療逼迫(ひっぱく)のため、自宅待機を要請されたという。その後、多歌介さんは入院し、奥さんはホテルに移ったが、多歌介さんは入院した直後に心肺停止となり、亡くなった。奥さんはホテルで療養隔離中のため、臨終には立ち会えなかったという。

多歌介さんは高校在学中の83年に3代目三遊亭円歌に入門し、98年に真打ちに昇進した。落語会だけでなく、講演会も数多くやって、全国を精力的に飛び回っていた。痛風の持病があり、太り気味だった多歌介さんはワクチン接種に懐疑的だった。落語のマクラや講演でも「コロナを恐れてはいけない」「笑いで免疫力を上げよう」と話し、落語家仲間には「ワクチンは打たない方がいい。おれは打たないよ」と宣言していたという。しかし、新型コロナで重症者が増える現状を見てなのか、今月15日に更新した自身のフェイスブックでは「ワクチン否定も肯定もしません。高齢者さん、疾患、不安のある方に否定はしません」と、以前のようなワクチン完全否定から変わっていた。感染していたと思われる23日のフェイスブックでは体調の悪さを訴えていた。最後となった高座から10日後のあまりに早い死はあらためてコロナの怖さを教えてくれた。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)